フリーマンの姿、心動いた大谷翔平… 絆深めた1年、満身創痍の2人が最後に笑う【2024年ちょっといい話】
【大谷翔平と仲間のちょっといい話(第7回)】 ヤンキースとのワールドシリーズ第1戦。ドジャースのフレディ・フリーマンが放った史上初の逆転満塁サヨナラ弾は球史に刻まれる瞬間となった。試合後の場内インタビュー。いつもなら、自身のインタビューを終えると急いでクラブハウスに戻る大谷が、グラウンドにとどまって、主役の話に耳を傾けていた。 ◆劇弾だ!フリーマン、延長10回に逆転サヨナラ満塁ホームラン!【動画】 息子の急病で大粒の涙を流し、相次ぐけがにも見舞われたフリーマンの苦難のシーズンを近くで見ていた大谷の心には、揺れ動くものがあったのだろう。大谷はフリーマンについて「チームメートとして感銘を受ける」と語った。 7月下旬、フリーマンには悪夢が待っていた。三男のマックスくんが難病を発症し、フリーマンは緊急離脱。マックス君は一時は集中治療室に入るなど重篤な状態となったが、懸命の治療と薬で快方に向かった。フリーマンはほとんど眠れない日々を過ごした。 「こんな目にあうぐらいなら、ワールドシリーズ第7戦の9回裏満塁の場面で3億回連続で三振したほうがいい」。8月の復帰会見では号泣しながら、悪夢を振り返った。 復帰した日、チームには三男マックス君を応援する「#MAX STRONG」Tシャツが配布された。その日から、大谷はしばらくの間、このTシャツを投球練習時に着用した。普段、球団指定の練習着しか着ないが、応援したいという強い気持ちを示したかった。フリーマンは大谷について、「翔平は僕や僕の家族にすごく優しくしてくれる。毎日見ることができる、特別な人間だ」と話していた。 ワールドシリーズ第2戦。大谷は左肩を脱臼したが、第3戦以降も強行出場した。勇気をもらったのは、右足首を負傷して走れない状況ながら、懸命にプレーを続けていたフリーマンの姿だった。「チームの士気だけは下げたくない。フレディもそうだし、みんなが万全の状態で出ているわけではない」。満身創痍(そうい)の2人は最後に笑った。(阿部太郎、写真も)
中日スポーツ