「豊洲移転」「築地改修」両論を併記 市場問題PTが報告書素案
東京都は26日、豊洲市場への移転問題を話し合う市場問題プロジェクトチーム(PT)の8回目の会合を開き、第一次報告書の素案について意見交換した。素案には、「豊洲市場移転案」と「築地市場改修案」の2案を盛り込んだ。今後、修正作業を経て5月下旬の次回会合までに報告書を取りまとめ、同月中に小池百合子知事に提出する予定。 【中継録画】豊洲問題の報告書素案は? 市場PTが第8回会合
維持コストや収入計画が課題
市場問題PTの報告書は、築地市場の豊洲市場への移転の是非をめぐって小池知事が下す総合的な判断の重要な材料と位置付けられている。同報告書が「第一次」となっているのは、専門家会議での土壌汚染対策が含まれていないため。市場問題PTは、第一次報告書を先行して提出した上で、専門家会議が報告書を作成した後、改めて「第二次」の報告書を作成、提出する方針。 豊洲移転案と、築地改修案の2案の併記について、小島敏郎座長(青山学院大学元教授)は「どちらかの案を採用すべきだということではなく、いずれの案もいろんな課題があり100点満点ではない」と説明し、移転するか否かの判断材料を提供するためとした。 豊洲移転案について、小島座長は、開場後に継続して赤字が発生する点や、6000億円以上の維持管理費用、設備の更新費用がかかるなど、経済的な問題があると指摘。菊森淳文委員(ながさき地域政策研究所長)は「(豊洲市場は)閉鎖型で衛生面でもプラスの市場」と利点をあげた一方、「赤字を補う収入計画が作れるかどうかが課題」と述べた。
7年で改修計画も立案に時間必要
築地改修案は、敷地内に仮設建物や作業場などに使用する「種地」を確保しながら工事を進め、約7年で改修を終える計画。これに対し、佐藤尚巳委員(佐藤尚巳建築研究所代表)は「改修案の場合は基本計画から立案の必要がある。計画の策定に2~3年必要で基本設計はその後になる」などと疑問を提示。市場関係者には一旦どこか仮設の市場に移転してもらい、その間に工事を進めた方が短時間かつ低コストで済むとの対案を示した。 小島座長は、「議論を詰めていく上で、まだ必要な十分なデータが提供されていない」として、都から築地市場内の各建物の築年数などの詳細データの提供を求める考えを示し、5月下旬の次回会合に向けて報告書作成に集中するとした。 小島座長に対しては、都議会の豊洲市場移転問題特別委員会が参考人招致を決めたが、小島座長は「あと1か月の(報告書を修正し、まとめるための)作業量を考えると、他のことをする時間はない。まずは小池知事への報告書を作ってから考えるべきこと」として、当面は報告書の作成を優先する考えを示した。 (取材・文:具志堅浩二)