【続 窓ぎわのトットちゃん】「トットの才能は、いったいどこにあるんだろう?」。音楽学校での迷える日々を癒した意外な「食べ物」
1981年の発売以来、多くの人に読み継がれている『窓ぎわのトットちゃん』。戦争の影に追われながらも「トモエ学園」でいきいきと過ごす子供たちの日常を描き、今なおみずみずしい感動を与えてくれる黒柳徹子さんの自叙伝です。国内だけで800万部以上、全世界では2500万部超の売り上げを記録し、「最も多く発行された単一著者による自叙伝」としてギネス世界記録にも認定(2023年12月)されました。 そんな前作から42年ぶりの続編として黒柳さんが書き下ろしたのが、『続 窓ぎわのトットちゃん』です。戦時下に「トモエ学園」を離れたトットちゃんが、家族とどんな日々を送り、生きる希望を見出していったのか――。今回はトットちゃんが思い描いた「夢」、そして「迷い」について特別にご紹介します。
映画『トスカ』を観て「オペラ歌手になる」ことを決意
東京大空襲によって北千束の家を後にし、青森に疎開したトットちゃん=黒柳徹子さん。その後、進学を機に再び東京に戻ったトットちゃんは、香蘭女学校で青春の日々を送ります。 学生時代のトットちゃんは「映画」に夢中になりますが、中でも強烈に印象に残った作品があったといいます。それが、情熱的な歌姫トスカと、画家カヴァラドッシの悲恋が描かれた、プッチーニ作曲の歌劇『トスカ』の映画でした。トスカの華やかな歌声に衝撃を受けたトットちゃんは、「オペラ歌手になる」という大きな夢を抱きます。
「徹子の部屋」のテーマ曲には歌詞があった!?
そして、ママが通っていた東洋音楽学校(現在の東京音楽大学)の声楽科に無事合格。トットちゃんは「オペラ歌手になる」という夢だけでなく、モーツァルトのオペラ『魔笛』の中で歌われる「夜の女王のアリア」を歌いたい、という具体的な目標も持ち始めました。ちなみにこの「夜の女王のアリア」の歌唱法は、みなさんお馴染みの「徹子の部屋」にも繋がりがあるのだそうです。 「ハァアア アッハハハハハハハ ハー」 あのフレーズの歌唱法はコロラトゥーラ・ソプラノと呼ばれていて、コロコロと転がすような歌い方をする「夜の女王のアリア」は、ソプラノ曲の最高峰といってもよい歌曲だった。 トットは一人のときに歌ってみたことがある。無理することなく高い音を出して、声を転がすことができた。 「コロラトゥーラ・ソプラノを極めたい」 トットの決意は固まった。 ちなみにだけど、『徹子の部屋』のオープニングのあの曲にはもともと歌詞がついていて、「コロラチューラ」という言葉が使われていた。 高い声を出すとき より目にならないように 笑うときはできる限り コロラチューラで ワサビ カラシ コショウ などは控えめに~ 煙草はとくにぜったい~ 禁物よ~ お酒はこれはぜったい~ やめられな~い これは、ソプラノ歌手の島田祐子さんと共演していた『即興音楽劇』というコンサートのテーマソングで、「やめられな~い」のあとに、「ハハハハハハハ、ハハハハハハハ、ハ~~」とコロラトゥーラで歌い上げる部分があった。 作詞は山川啓介さん、作曲はいずみたくさんだ。『徹子の部屋』のスタッフが、番組のオープニング曲をいずみたくさんにお願いしたところ、このテーマソングは時間的にも三十秒でちょうどいいから、これを使いましょうということになったのだった。みなさんもぜひ、この歌詞を『徹子の部屋』のあのメロディで歌ってみてください。 ルールル♪ ラーララ♪ というハミングのようなコーラスが印象的な「徹子の部屋」テーマ曲に、こんなにユーモアたっぷりの歌詞があったなんて! トットちゃんの東洋音楽学校時代のエピソードには、意外な“トリビア”も隠されていました。
構成/金澤英恵