アルミの駅舎消える旅情、木造取り壊し…維持費削減で
鉄道事業の利用低迷に苦しむJR四国が、昔ながらの木造駅舎を取り壊し、バス停のような簡素な駅舎への転換を進めている。維持費削減が目的で、これまでに13駅を整備した。地域のランドマークとして親しまれ、旅情を誘う駅舎が姿を消すことに、住民からは反発も起きている。(徳島支局 北野浩暉、高知支局 石渕譲) 【写真】駅舎の中にはベンチと券売機が置かれている(21日、徳島県小松島市の中田駅で)=近藤誠撮影
牟岐むぎ 線の 中田ちゅうでん 駅(徳島県小松島市)。1936年築の旧駅舎を取り壊して、2022年に整備されたアルミ製の駅舎は広さ10・8平方メートル。畳6枚分ほどのスペースに、ベンチ2台と券売機が備えてあるだけだ。 1日の平均乗降者数は826人(昨年度)で、学生や通勤客が多い朝夕に集中する。県立小松島西高校3年生(18)は「雨の日は駅舎に入りきらないから、多くの人が外で傘をさして列車が来るのを待っている」と話す。 JR四国を巡る状況は厳しい。鉄道運輸収入は1991年度の370億6500万円をピークに減少傾向が続き、2023年度は223億3400万円。鉄道事業は民営化後、一度も黒字化していない。 JR四国は、86%の駅を無人化し、約6割の普通列車でワンマン運転を実施するなど人件費を削減して経営のスリム化を図ってきた。 14年度からは、駅舎の簡素化を実施。地元と協議し、22年度までに13の駅舎を簡易なものに建て替えた。全259駅の中で約100駅が木造駅舎で、うち9割以上が築80年以上を経過している。大がかりな駅の修繕には数百万円かかり、耐震化には、最低でも1000万円以上必要になる。
木造駅舎が建てられた当時、多くの駅では、駅員による改札や切符の販売のほか、列車の運行管理、輸送される荷物の受け渡しなどの業務があったという。 今後は全体の3割近くにあたる約70駅の簡素化を検討しており、西牧 世博つぐひろ 社長(当時)は今年4月の記者会見で「利用の少ない駅に駅舎を必ずしも設ける必要はない。設けるなら簡易にしたい」と強調した。