アルミの駅舎消える旅情、木造取り壊し…維持費削減で
「地域の顔」といえる駅舎の 変貌へんぼう に反対運動も起きた。 三角屋根の洋館のような建物で知られる徳島線の阿波加茂駅(徳島県東みよし町)では、JR側が22年1月、老朽化に伴う建て替えで町に簡素化の意向を伝えたところ、住民らが「町の玄関口が寂れ、にぎわいを失う」と反対の署名活動を展開し、約850人分を町に提出した。 町はJR四国と協議を重ね、駅舎の存続は難しいと判断。JR側が解体費用を負担した上で、町が約1600万円かけて、トイレと交流スペースを備えた新たな木造の駅舎(約45平方メートル)を整備することが決まった。 高知県佐川町は16年、土讃線西佐川駅の駅舎をJR四国から譲り受け、約1600万円をかけて耐震化と改修を行った。築100年の駅舎には、「仁淀ブルー」と呼ばれる近くの清流・仁淀川流域をPRする施設が入る。 駅舎の風景は、昨夏の「青春18きっぷ」のポスターに採用された。町まちづくり推進課は「地域のシンボルとして駅舎を残して良かった」としている。 香川高専の宮崎耕輔教授(交通工学)の話「JR四国の経営状況から駅舎の簡素化はやむを得ない。だが、駅舎が担ってきた地域の交流や人々が集う機能が失われると、駅周辺が寂れ、鉄道がますます利用されなくなる悪循環に陥る可能性がある。鉄道会社や自治体、住民が知恵を絞り、駅舎に人が集まるような工夫を凝らし、活用を進めることが大切だ」
3Dプリンターで建て替え
簡素な駅舎は、JR各社の沿線で増えている。 JR西日本は、2018年以降、加古川線の 久下村くげむら 駅(兵庫県丹波市)や山陰線の西浜田駅(島根県浜田市)など約50駅で、アルミやコンクリートを使った小さな駅舎に建て替えた。 今年5月には、新興企業「セレンディクス」(兵庫県西宮市)と組み、特殊な3Dプリンター技術を用いた国内初の駅舎の建設に着手した。来年3月までに関西の無人駅1棟を建て替える予定だ。費用や施工期間を検証し、 汎用はんよう 化を目指す。 JR東海も、これまでに10駅をアルミ製の駅舎に更新した。飯田線下地駅(愛知県豊橋市)では、東海道新幹線の車両に使われたアルミを再利用している。