「保田龍門」と「現代絵画」 来年1月26日までコレクション展、和歌山・田辺市立美術館
和歌山県田辺市たきない町の市立美術館は来年1月26日まで、近代洋画コレクション展として、小企画「没後60年 保田龍門」と特集展示「現代絵画コレクション」を開いている。同館のコレクションの主軸の一つをなす日本の近代美術から、特に「洋画」に焦点を当てて作品を紹介している。 【レシートアートで熊野描く 現代美術家VIKIさん実演 12月28日、和歌山県田辺市の記事はこちら】 小企画「保田龍門」展は、絵画と彫刻という近代美術の主要な二つの領域で、自らの芸術を真摯(しんし)に追求し続けた保田龍門(1891~1965、本名は重右衛門)の制作を、没後60年を迎えることを機に振り返った展覧会。これまで市立美術館が収集してきた作品のほか、県立近代美術館(和歌山市吹上1丁目)が所蔵する作品や紀南地方に遺された肖像作品も併せて紹介している。 龍門は、那賀郡龍門村(現在の紀の川市)に生まれ、東京美術学校西洋画科と日本美術院彫刻研究所に学び、洋画と彫刻双方の研究、制作に取り組んだ。1917年、美術学校卒業制作の洋画が文部省美術展覧会で特選となり、翌年の日本美術院展覧会では彫刻作品が樗牛賞を受けるなど、その才能が早くから認められた。 郷里の有力者の支援を得て20年から、アメリカ経由でフランスに渡り、彫刻家のアントワーヌ・ブールデルやアリスティド・マイヨールらに学び、23年に帰国した。帰国後は肖像作品を主に発表したが、次第に中央への出品を控えるようになり、関西を拠点に活動して公共制作や後進の指導に力を注いだ。 晩年の龍門は、依頼を受けて肖像彫刻を作ることが多く、展示作品の一つ「脇村市太郎翁像」(1963年、ブロンズ、田辺市立図書館蔵)は普段、田辺市立図書館(田辺市東陽)の入り口に設置されている。脇村市太郎は、同市の教育と文化の振興に私財を投じて貢献した実業家。ほかにも「自画像」(1915~17年ごろ、田辺市立美術館蔵)や「南方熊楠之像」(65年、ブロンズ、南方熊楠記念館蔵)など作品21点と資料を展示している。 特集展示「現代絵画コレクション」は、1960年代から2020年代までに描かれた新しい絵画の表現を、市立美術館のコレクションを通じて紹介している。展示作品は、岩中徳次郎「Work 4LA」(1989年、田辺市立美術館蔵)や野田裕示「WORK33」(74年、田辺市立美術館蔵、2024年度新収蔵)、妻木良三「始景Ⅱ」(2014年、田辺市立美術館蔵、24年度新収蔵)など約20点。 同館学芸員による展示解説会を12月21日、来年1月18日の午後2時から開く。予約は不要で、観覧料のみ必要。 開館時間は午前10時~午後5時(入館は午後4時半まで)。毎週月曜休館(ただし、1月13日は開館し、14日と12月28日~1月4日が休館)。観覧料は260円。学生と18歳未満は無料。
紀伊民報