「新幹線が通ると値段は4、5倍に」ニセコの市街地を転売ヤーが…外国人は空き家対策の救世主なのか?
「地元オーナーの中には、店舗や賃貸物件を外国人に売ったり貸したりすることを嫌がる人もいると聞きますが、外国人が駅前の土地を所有していることも、多くの外国人が倶知安町に住んで働いていることも事実なんです。 彼らをステークホルダーとして捉え、再開発への参加につなげるような誘導政策を打ち出すべきでしょう。お互いウィン・ウィンになるまちづくりをしていかないと、駅前一帯はゴーストタウンになるだけだと思います」 ◆リゾートエリアは「植民地」、駅前の商店街はその従業員のための街に… 駅前の再開発が足踏み状態であっても、新たに設置される新幹線駅の建設工事は進む。昨年10月、鉄道建設・運輸施設整備支援機構から倶知安駅のデザイン素案3案が示され、倶知安町は住民アンケートを実施。その結果を踏まえ、6月末までに1案に絞るという。 「町が立ち上げた整備推進委員会が今、新幹線の駅舎と一体で整備する都市施設や周辺機能をどうするか話し合っているみたいです。 検討されている都市施設の案は、1階に観光案内所、2階に羊蹄山を眺める展望スペースを設けるといった内容。僕が議員をしていた時には、この都市施設に約7億円の費用がかかるという話でした。それが、今年度は13億円に上がっている。費用が2倍になると知って、『羊蹄山は駅の窓からとか、町を歩いて見てもらえばいい。展望台なんか必要ない』と意見を言う人が増えてきましたよ。自治体が官民連携で工事費などの変化に対応して進めるべきところを、倶知安はそれができていないんです」 北海道建設新聞によれば、’22年には民間企業で構成するまちづくり勉強会が、新駅の南北それぞれに15階建ての複合施設を建設する再開発の素案をまとめ、町に報告していたという。複合施設の北棟に商業施設、オフィス、図書館、温泉施設、ホテルなど、南棟には店舗と分譲マンションを完備する計画となっていたらしい。 「僕も複合施設の案を見せてもらったんですが、建設的な提案だと感じました。住環境を良くすることと日常生活の利便性を高めるといった点で、すごくいいと思います」 しかし、民間からの提案に、町はあまり関心を示さなかったようだ。 「世界を駆け巡っている日本人ユーチューバーが、ニセコに来て『植民地になっているぞ』と発信して視聴回数が15万回を超えています。まったくその通りで、リゾートエリアは世界各国の植民地のようだし、市街地は今やリゾートエリアで働く人たちのベッドタウンと言えるでしょうね」 ここ数年、日本の空き家に対する外国人の関心が高まっているという。だが、こと倶知安町の空き家に限っては、全国と事情が大きく異なっていることは確かだろう。 滝口直久(たきぐち・なおひさ)有限会社ブーム代表取締役。スノーボードとスキーの専門店Boom Sportsと不動産会社NTDを経営する。 田中義人(たなか・よしひと)株式会社ニセコリゾートサービス代表取締役。1972年、札幌市生まれ。倶知安高校卒後、フリースタイルスキー(モーグル)選手として活動し、ヨーロッパカップや全日本大会などに出場。’03年倶知安町に戻り、’07年に同社を設立。スキーレンタル、レンタカー、不動産賃貸事業などを展開する。’11年から’23年まで倶知安町議会議員を3期務めた。 取材・文:斉藤さゆり
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