「新幹線が通ると値段は4、5倍に」ニセコの市街地を転売ヤーが…外国人は空き家対策の救世主なのか?
リゾートエリアを仕事場とする従業員やインストラクターなどがいなくなる夏場、市街地の事務所や住宅地のスタッフ寮はどうなるのだろう。人の出入りはなくなるのか。 「スタッフを住まわせるために一軒家を買ったオーナーは、5月から10月までは新幹線関係の工事とかコンドミニアムの建設を請け負う会社に貸すんです。だからその間は、工事現場や建設現場で働く作業員たちが住んでいます。 一軒家でもアパートでも、今までは冬の間だけ借りるオーナーが多かったんですが、一昨年あたりから通年で借りる契約が一気に増えました。秋以降に賃貸物件を探しても見つからないからです」 とはいえ、外国人が所有する物件の中には住民不在のものもあり、冬季には屋根の積雪が放置されたままの家屋が問題を引き起こしている。 「アジア圏の人が個人で一軒家を買って、自分が滞在しない間は放っておくんです。冬場は屋根に雪が積もって危ないので、近隣の住民から役場にけっこうクレームの電話が行きます。そうすると役場から不動産の管理会社に、屋根の雪を下ろすよう要請の連絡が入る。うちにも電話が来るので、2、3日以内に対応するようにしています」 ◆外国人の地主が多くて…自治体の再開発構想が難航 滝口さんの話にもあったが、海外の投資家が市街地の不動産を狙う理由の一つは、ニセコの地価高騰にある。スキーレンタルや不動産賃貸業を展開し、昨年3月まで同町議会議員を3期務めた田中義人さんはこう話す。 「たとえば、僕がニセコひらふに戻った’03年に坪3万円だった場所は、今、坪100万円で取り引きされています。20年で30倍も上がっているんです。 市街地も、新幹線が開通するので不動産の値段が上がっている。その動きを見据えて、大きなプロジェクトを手がけない層の外国人たちが、駅前通りの事業者から不動産を買っていると聞きます」(田中さん、以下同) 北海道新聞の’20年の報道によると、’15年に倶知安商工会議所と倶知安町がそれぞれ駅前商店街の土地の一角と近接地を取得し、飲食店や物販のスペースをつくる計画だったが、その取り組みは’20年初めにとん挫。新幹線開業を見据えた投機マネーが流入し、土地売買が繰り返されて地価が高騰したことが理由のようだ。 道新は「数年で外国人などの不在地主が増えた」「商店街は歯抜け状態」とも報じている。 「駅前通りは今も歯抜けの状態が続いています。駅前の土地・建物の所有者はほとんどが外国人ですし、買った外国人がほったらかしにしたままの物件もけっこうあるんです」 倶知安町の外国人人口は1月末時点で前年同期比65.5%増の2897人。全人口1万6596人の17.5%を占める。世帯数では外国人のみの世帯が2622に上り、町の全世帯1万151の25.8%にも達している。