エベレストより困難…ヒマラヤ名峰、福井県の男性登頂 難所越え最高到達点更新
登山ガイドなどで活躍する福井県大野市の脇本浩嗣さん(62)が今秋、ヒマラヤ屈指の名峰アマダブラム(6812メートル)の登頂に成功した。「行きたくても行けない人と登頂の感動を共有したい」と、クラウドファンディング(CF)の支援者に現地の写真や動画を送るプロジェクトも実施。多くの人の思いを背負い、自己最高到達点を更新した。 脇本さんは同市の登山愛好グループ「荒島愛山会」の会長を務め、「越前おおの山案内人倶楽部(くらぶ)」にも所属。登山道の点検や整備、登山時のアドバイスなどを行う「自然公園指導員」としても活動し2022年に藍綬褒章を受章した。 ヒマラヤに夢を抱き続け50代半ばで大野市役所を退職。22年秋にネパールのメラピーク(6461メートル)に挑戦し6千メートル超地点まで到達した。帰国後に報告会を開いたところ、興味があっても行けない人が多くいることを知った。そこで、旅費を募るCFの返礼品として登山の様子を中継したり、SNS(交流サイト)で随時発信したりするプロジェクトを企画し、約90人から約111万円の支援を受けた。 今回挑戦したアマダブラムは上部の切り立った山肌が特徴で、世界最高峰のエベレスト(8848メートル)より難易度は高いという。脇本さんは9月下旬にネパールに降り立ち、現地ガイドらとともに入山。4530メートルのベースキャンプを出発後は、長時間ロープを使って岩を昇降するなど、4日かけて登頂した。 ベースキャンプでライブ中継をする予定だったが、通信環境が悪く断念。代わりに、支援者から事前に募った要望に応え、縄跳びをする様子などを録画した。支援者一人一人の名前を書いたボードと写真も撮り、帰国後に送付。現地の食事や生活風景など、「(ヒマラヤ旅を)実体験しているような」写真も限定公開した。 これまでで最も過酷な登山となったが、「(自身の)最高到達点に立った感動を味わえた」と脇本さん。ヒマラヤに挑戦できる環境に改めて感謝し、支援者には「少しでも行ってみたいと思ったり、行った気分になってもらえたらうれしい」と話す。 現地登山ガイドの「なんとしても登らせたいという意欲」には、同じガイドとして大いに刺激を受けたという。 脇本さんと一緒に登った勝山市のクライミング愛好家加藤紀代美さん(64)は「私たちの年齢に配慮し、余裕のあるスケジュールを組んでくれたガイドのおかげで楽しめた」と笑顔を見せた。
福井新聞社