投低打高傾向だった春のセンバツ。名スカウトが評価したドラフト候補10人
巨漢の上田は、2回戦の膳所戦では、データを駆使したシフトディフェンスで左中間、右中間を狭められたが、その左中間を破っていく二塁打で、スイングスピードの速さをアピールした。 林は準々決勝の創成館戦で通算34本目となる本塁打をマークした。守備でのミスもあったが、片岡氏は、そのスイングスピードに注目している。 「ショートに好素材が目立った。肩と足を使える選手が揃った。静岡で1番を打った村松開人が、その筆頭。体は小さいがセンスの塊に見える。足も速い。守備のいい日大三高の日置航、パンチ力がついてきた明秀日立の増田陸を加えた3人は、プロのスカウトがチェックする内野手だ。また右の外野手としては東海大相模の森下翔太も抑えておきたい。まだ線は細いが、ソフトバンクの内川に似て懐が深い。3拍子揃っている万能型だ。またキャッチャーでは体格と肩で智弁学園の小口仁太郎の名前を挙げておきたい」 東海大相模の森下翔太・外野手は、ここまで3試合で12打数3安打1打点とやや精彩を欠いている。準決勝の智弁和歌山戦でアピールしたいところだろう。 一方、投手では大阪桐蔭の柿木蓮、横川凱の大型の左右両投手に、1回戦で12安打5失点して日大三高に敗れた由利工の佐藤亜蓮の名前を加えた。 「大型左腕の横川、背番号1を背負う柿木は共にストレートの力が物足りない。横川はあれだけ一生懸命腕をふってボールが140キロそこそこ。球離れが一定していないためだ。2人共に立派な体をまだ使いこなせていないという印象を持った。逆にピッチャーらしかったのは佐藤。体を無駄なく使えているし、リリースポイントでボールがピュっとキレているようだ。それほど力んでいないのにボールが来ている。まだストレートは130キロ台で、ドラフト1、2位という投手ではないが、面白い存在だ」 柿木は、ここまで先発、横川は、中継ぎスタンバイという起用をされている。柿木は2試合11回で無失点、横川は、2試合5回で1失点という結果を残しているが、プロスカウトの目から見れば、ストレートでぐいぐい押せない内容に物足りなさがあるという。 彦根東の左腕、増居翔太は花巻東戦で9回までノーヒットノーラン。だが、10回にサヨナラ負けを喫して不運にも、大記録は幻に終わった。 片岡氏は、「すべてのボールがコーナーにきちっ、きちっと集まっていた。あれでは金属バットといえどなかなか打てない。ただ、あの1試合だけではプロという視点での評価は難しい。伸び幅という点で見ればスケールの大きい松山聖陵の土居豪人、東海大相模の齋藤礼二、明秀日立の細川拓哉、日大三高の中村奎太あたりを追跡していくべきかもしれない。細川は体が硬そうだが……」という見方をしている。 センバツのドラフト戦線は、大阪桐蔭一色で終わりそうだが、片岡氏は、「高校生は春から夏にかけて大きく変わる。今後の伸び幅に期待したい。特に投手では、2年の井上広輝(日大三高)、奥川恭伸(星稜)が来年のドラフトで目玉になる可能性がある」という。 プロスカウトは甲子園という大舞台での勝負強さも評価の対象に加える。スカウトの好みにも別れるが“持っている選手”だ。ベスト4からの戦いで、その存在感をアピールするのは誰になるのだろう。