トルシエ監督に聞いた――ベトナム代表に日本人選手をひとり連れていけるとしたら誰にするか?
――最後に、日本サッカーはトルシエ監督が率いた時代から飛躍的に進化を続けています。そのなかで、日本はW杯優勝という大きな目標の道半ばにいるわけですが、20年前と比べてどれだけその目標に近づけたと思いますか。 トルシエ 日本と同じレベルの国が2050年までの残り25年間で、W杯を勝つことはより現実的になっていくと思います。W杯はもはや強豪だけの大会とは言えません。もちろん、私がその結果を占うことは難しいです。 でも、日本はあれから著しく進化し、育成年代の基本技術、組織力は非常に高いレベルにあります。先進国であるがゆえに、環境はよく、自己管理やトレーニングのノウハウも世界基準であるし、海外のトップクラブを経験している選手も増えています。 ただ、そのなかでW杯を勝つためには、登録23人の中でUEFAチャンピオンズリーグを経験している選手が20人くらいは必要だと思います。今大会で言えば、南野拓実、冨安健洋、守田英正、上田綺世、旗手怜央、久保建英の6人。それ以外では、鎌田大地や古橋亨梧が挙げられますが、トップクラスの国とそこの差を埋めなければいけないと思います。 前回のカタール大会ではW杯の準決勝にモロッコが初めて進出し、2002年日韓大会では韓国も残りました。そこからの2試合の壁がすごく高いと言われていますが、私は今後25年で、こうした国がその壁を越えられると思っています。だから、日本も近いうちにベスト8進出はできると思います。 2050年というと、私は95歳。なので、日本の監督へ復活することはおそらく無理ですけど、やる気はいつでもありますよ(笑)。 (おわり) フィリップ・トルシエ1955年3月21日生まれ。フランス出身。28歳で指導者に転身。フランス下部リーグのクラブなどで監督を務めたあと、アフリカ各国の代表チームで手腕を発揮。1998年フランスW杯では南アフリカ代表の監督を務める。その後、日本代表監督に就任。年代別代表チームも指揮して、U-20代表では1999年ワールドユース準優勝へ、U-23代表では2000年シドニー五輪ベスト8へと導く。その後、2002年日韓W杯では日本にW杯初勝利、初の決勝トーナメント進出という快挙をもたらした。現在はベトナム代表を指揮。
篠 幸彦●取材・構成 text by Shino Yukihiko