川崎・高井幸大が示すパリ五輪への決意。世界大会を“楽しむ”ポテンシャルと海外移籍への今の想い【インタビュー後編】
大舞台で輝きを放てるか
「ここまではある程度、思った通りに来ていると感じます。これまでもオリンピックには出たいと考えていましたが、現実として捉えられているわけではなかった。でも、今は現実的ですし、やはり出場したいです」 気持ちをあまり表に出さない彼であるが、五輪への想いは強い。 世界中が注目する大会で自らの力を試し、成長のための貴重な経験を積みたいとの願いを抱えているのだろう。 では、もしそのメンバーに選ばれた時にまず感謝を伝えたいのは? 気恥ずかしそうに答える。 「お母さんと言っておきましょう。ここまで育ててもらえましたから」 好きな言葉は「水滴石を穿つ」。小さな努力でも根気よく続けてやれば、最後には成功するという意味である。その真意を問えばまたはぐらかされてしまう。 「僕の歩み方とはまったく違うんですが、言葉として格好良いじゃないですか(笑)」 しかし、プロの厳しい環境に揉まれながら、継続する重要性を学んだ今、その言葉は彼にお似合いのようにも映る。決して努力を見せず、言葉にもしない。それでも「毎日もっと練習して成長することだけを考えて」と研鑽を積んでいく。 そしてさらなる飛躍も期待できるなか、周囲が気になるのは、近年、多くの若手が早いタイミングで決断する海外移籍への想いだろう。その点についてはこう語る。 「特にここに行きたいなど憧れはないです。ただ、サッカー選手として成長するためにいつか行ければ、今言えるのはそれくらいだと思います」 パリ五輪に向けては「まずは選ばれて充実した大会にしたい」という。 奇しくもインタビュー当日には、川崎の新入社員研修が行なわれ、鬼木達監督や中村憲剛らの話を聞きながら、若者たちが未来に想いを馳せていた。19歳の新たな芽もどう輝くのか、楽しみである。 ■プロフィール たかい・こうた/2004年9月4日生まれ、神奈川県出身。192㌢・93㌔。リバーFC―川U-12―川崎U-15―川崎U-18―川崎。J1通算24試合・1得点。攻守で戦える川崎期待の大型CB。 取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)