“角界のマツコ”十両から復帰の37歳・宝富士が無傷5連勝 快進撃支える2つの要因
◆大相撲 ▽夏場所5日目(16日、東京・両国国技館) 2場所ぶりに再入幕の西前頭16枚目・宝富士が無傷5連勝を飾った。東十両筆頭・大奄美に寄り切りで快勝した。序盤の5日間を全勝で終えるのは2017年春場所以来、7年ぶり。タレントのマツコ・デラックスに似ていることから“角界のマツコ”の異名を取る37歳のベテランが、優勝戦線を盛り上げていく。全勝は平幕の宇良と御嶽海を加えた3人。1敗で大関・琴桜、新小結・大の里ら6人が続く。カド番の大関・霧島は3連敗で痛恨の4敗目。 【夏場所】番付&星取表 力強い取組に館内が沸いた。宝富士は大奄美の当たりを受け止め、左前まわしをガッチリつかんだ。迷いなく圧力をかけて前進し、寄り切った。「先場所は差し手争いでごちゃごちゃしたので、前に先に出られた」と振り返った。 先場所は12年九州場所以来、67場所ぶりに十両へ転落。歴代6位の幕内連続出場も990回で止まった。ようやく千秋楽で勝ち越して返り咲いた幕内の土俵で、17年春場所以来の無傷5連勝。近年の苦難がうそのような快進撃だ。要因の一つは記録の“呪縛”から解き放たれたこと。「吹っ切れた。プレッシャーなく相撲を取れているのは大きい」と相撲を取れる喜びをかみしめる。また「どこかで止まるだろうから、一番一番集中して」とベテランらしく冷静に足元を見つめた。 稽古量の増加も快進撃を支える。4月、旧宮城野部屋勢が転籍。「今までは幕下の相手が少なかった。関取衆だと攻め込まれて後手に回るが、幕下だと自分の力が出せる」とスタイルを固めることに集中できるようになった。約40人の力士の大所帯となったことが、大きな効果を生んでいる。 花道では近大時代の同級生で、20年初場所幕尻優勝の千田川親方(元幕内・徳勝龍)が見守った。「優勝いけるっしょ」と盟友の快進撃に太鼓判。グータッチを交わし、勝利を祝福した。宝富士は「冗談を言ってくれてありがたい。気持ちが楽になる」と笑顔を浮かべた。 先場所は同部屋の尊富士が110年ぶりの新入幕優勝を決めた。「圧倒的な相撲ですごいなと思った」。同じ青森出身の弟弟子がスピードVなら、宝富士が初優勝すれば新入幕から77場所目で史上2番目のスロー記録になるなど、対照的な賜杯となる。タレントのマツコ・デラックス似でもおなじみの37歳は「(幕内で)出続けたい」。大ベテランの域に入ってきたが、まだ老け込むつもりはない。(大西 健太)
報知新聞社