[MOM4698]鹿島ユースFW長疾風(2年)_まさに疾風迅雷!献身のスピードスターが今季初のフォワード起用に2ゴールで満点回答!
[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ] [5.11 プレミアリーグEAST第6節 鹿島ユース 3-0 青森山田高 カシマサブグラウンド] 【写真】松木玖生の衝撃スタッツにファン「こんなの初めて見た」「バケモン」「GKもしてた?」 絶対的な自身の武器を生かす術はわかっている。風のように駆け抜けていくそのスピード、疾風怒濤。どんな時でも、どんなポジションでも、チームの勝利のために、100パーセントの力で走り続けてやる。 「今節はフォワードで出ましたけど、自分はどこで出ても活躍できる選手になりたいと思っているので、次節もどのポジションで出るかはわからなくても、試合に出る時は常に結果を残していきたいと思います」。 鹿島アントラーズユース(茨城)の11番を託されている、鈴鹿育ちのスピードスター。FW長疾風(2年=FC GRANRIO SUZUKA出身)の研ぎ澄まされた得点感覚が、ホームゲームを戦ったチームに白星とあふれる笑顔をもたらした。 「今日は初めてプレミアでフォワードをやりました」。本人がそう語ったように、長の今シーズンは決して順風満帆には進んでこなかった。開幕前に負ったケガの影響もあって、なかなか公式戦を戦うメンバーには入れず、チームメイトのプレーを見守る時間が続く。 ようやくプレミアデビューを果たしたのは第4節の横浜FCユース戦。右サイドバックとしてスタメンに指名され、カシマスタジアムのピッチへと解き放たれると、「どんどん上がっていこうと思っていました」と攻守にアグレッシブな姿勢を披露。コーチングスタッフも評価する好パフォーマンスで、チームの今季初勝利の一翼を担ってみせる。 続く第5節の尚志高(福島)戦でも右サイドバックとしてフル出場を果たした中で、とうとう巡ってきたフォワードでの出場機会。「自分の特徴はスピードと裏への抜け出しなので、監督からも試合前に『どんどん裏に抜けていこう』と言われたことを意識しました」。やるべきことをしっかり整理して、青森山田高(青森)戦のキックオフを迎える。 前半24分。ゴールへの嗅覚が作動する。左サイドで自ら時間を作ると、右へと流れたボールの行方を眺めながら、ハッキリとしたイメージが頭の中に浮かぶ。「亜門が上がってきた時に『シュートを打つだろうな』と思ったので、そのこぼれを意識しました」。DF玉木亜門(3年)が狙ったフィニッシュは相手GKに阻まれたものの、詰めたFW吉田湊海(1年)のシュートに左足で触ったボールは、ゴールラインをゆっくりと越える。 「『ここらへんに来るな』と思ってポジションを取っていたらボールが来たので、そうしたら当たったんですけどね。決めた感覚はあったので主張しました(笑)」。吉田と長はお互いが自身のゴールをアピールしたものの、公式記録は長に軍配。11番にプレミア初得点が記録される。 これだけでは終わらない。後半開始早々の1分。ここも長の粘り強いキープを起点に、左サイドへの展開からMF小笠原聖真(3年)が丁寧なクロス。競り勝ったMF中川天蒼(2年)のヘディングはクロスバーに跳ね返ったが、「クロスが上がってきた時に、自分は折り返しを狙っていたら、ポストに当たってこぼれてきたので、あとは決めるだけでした」という長のダイビングヘッドが無人のゴールへ突き刺さる。 さらに終盤には吉田が3点目をマーク。ディフェンス陣も最後まで相手の反撃を抑え切り、終わってみれば3-0の快勝。「やっぱりプレミアのゴールは気持ち良いですね。あれだけ応援の方も来てくれている中で決められたので、凄く嬉しかったです」と笑顔を見せた11番が、勝利の主役を鮮やかにさらってみせた。 長が中学時代にプレーしていたチームは、三重県のFC GRANRIO SUZUKA(グランリオ鈴鹿)。「鈴木修人さん(現・アカデミーマネージャー)がスカウトに来てくれて、練習参加させてもらったんですけど、柳澤(敦)監督や(小笠原)満男さんがいらっしゃって、『凄い環境だな』と思って、『ここだったら成長できる』と思ってここに決めました」と単身で国内有数の名門クラブへと身を投じた。 ゆえにこのチームで勝負するための覚悟はもちろん備わっている。もともと攻撃的なポジションを務めてきたものの、昨シーズンの途中からプレーする機会を与えられたサイドバックにも、「サイドバックをやっていた時に相手にされて嫌だったプレーを、今度は自分がフォワードになった時にやることは意識していますし、サイドバックも結構楽しいなと感じています」と極めてポジティブに取り組んできた。 本人はこの日の2得点を「結果的には当たって入ったり、こぼれを決めただけなんですけどね」とは語ったものの、努力を積み重ねていない人の下には、きっとボールだって転がってこない。見ている人は必ず見ている。サッカーの神様が味方をするだけの日常を、長が過ごしていたということなのだろう。 週末の試合が終われば、また激しい競争が繰り広げられるトレーニングが待っている。次は試合に出られるのか。任されるポジションはどこなのか。それは自分が決めることではない。ならばやるべきことは、いつだって変わらない。「これからもプレミアでどんどん結果を残し続けて、チームの勝利に貢献できるように頑張りたいです」。 シンプルな決意が、力強く響く。考えるべきは100パーセントの力を出し尽くして、チームの勝利に貢献し続けることのみ。その勢い、疾風迅雷。鹿島ユースに現れた、鈴鹿育ちの献身的なスピードスター。ピッチを全速力で駆け抜ける長疾風には、どのチームのデイフェンダーもご注意を。 (取材・文 土屋雅史)