中間業者を二枚も噛ませる周到な手口で行われた赤坂・溜池の「アパホテル」地面師事件...逮捕された中間業者の「弁明」とは
小柄な初老の不動産ブローカー
折しも、不動産業界で事件の評判が持ちあがっていた渦中の17年6月、ダイリツから物件を購入したクレオス社長の白根学に目黒区にあるウェスティンホテル東京で会うことができた。1階の奥にあるバーで待ち合わせると、そこに60代と思しき小柄な初老の男がやって来た。濃紺の地味なスーツを着て、黒い布製のショルダーバッグを肩にぶら下げ、重そうなキャリーバッグを引いている。それが白根だった。 「いや、すっかり遅くなってすみません。場所を間違えてしまって。そのうえ道が混んでいまして、申し訳ありません」 予定より1時間近く遅刻した。言い訳をしながら、汗だくの白根が平身低頭の態で名刺を差し出した。私は思わず、彼の手にしている大きなキャリーバッグに視線がいった。 「お待ちしていました。ひょっとして海外にご出張されていたのですか」 そう尋ねると、キャリーバッグを開けながら答えた。 「いえいえ、ぜんぶ書類なんです。いつ、どこで必要になるかわからないので、こうしていろんな物件の資料を持ち歩いています。そうでないと、不安なので」 キャリーバッグだけではなく、ショルダーバッグにも不動産物件の書類がぎっしり詰まっていた。重い荷物を抱えながら、毎日、取引先を飛び回っているという。
森 功(ジャーナリスト)
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