藤原竜也はなぜ愛されるのか 『全領域異常解決室』に集まった“神様”が似合う役者たち
“神様”の物語をドラマに昇華させた『全領域異常解決室』
真相がわかったとき、改めて前半を見返すと、興玉が小夢に対して、クールに振る舞いながらも、実は感情がかすかに震えているのがわかる。第2話で「相変わらずですね」と小夢に言ったとき、知り合って間もないはずの彼女に興玉の奇妙な愛おしさのようなものが感じられるようだと観ていたのだが、やっぱり、古代からずっと知り合いだからこその感情であったとナットクする。 ただし、ふたりには恋愛感情はない。アメノウズメノミコトの転生体である小夢は、猿田毘古神の転生体である芹田(迫田孝也)とつねに夫婦になる運命にあるらしいのだ。興玉と小夢は現代では室長と室長代理という上下関係にある。演じている藤原は広瀬より10歳以上年長なのだが、藤原はエイジレス感があって、違和感がない。 このドラマの謎な部分は、一般には興玉と猿田彦は同一神あるいは、猿田彦の子孫のように言われていることなのだ。なぜ、主要キャラの神様がかぶっているのか、ややこしい。でもここにはきっと何か仕掛けがあるのだろう。 巧いなあと感心するのは、世界最古のキャラのようなものである八百万の神をベースにしたことで、すでにある設定や物語からいくらでも換骨奪胎できることなのだ。視聴者は元ネタから考察が楽しめるのである。人間の歴史ものと違って、神様情報には、絶対にこれが正しいということもないし、万が一、一般的に正しいとされている説を変えたところで、遺族に悪いと思わないのかというような外野の批判はナンセンスである。世界最古だけあって、さんざん改変されたり枝分かれしたりしているので、それも含めて、限りなくイマジネーションが膨らんでいく。 主演の藤原が、スケールの大きな超越した役をいままで演じてきたスキルを使って神様感が漂うのもいい。先述のエイジレス感もそのひとつ。ゼンケツメンバーのひとり・小日向文世も同じく、超越感を漂わせることのできる稀有な俳優で、奇想天外なドラマにやたらと説得力があるのだ。広瀬アリスも明るさのなかにどこか仄暗い影がのぞくミステリアスな雰囲気があって、神様キャラが似合う。 『ゼンケツ』、最初はタイトルが覚えにくいと思ったけれど、いまやあと数話で終わってしまうのがとても惜しい。
木俣冬