「自分のスケート」完結のため、引退を1年延期 大学休学を経て、再認識したかけがえのない出会い
インカレ初出場も果たした躍動のラストシーズン
休学期間中は複数のアルバイトを掛け持ちし、それ以外の時間のほとんどはスケートの練習に費やした。昨年6月には足首を骨折するアクシデントに見舞われたが、焦らず、計画的に休養を取りながらコンディションを調整。日本学生氷上競技選手権大会(インカレ)や冬季国体の代表権を獲得するなど結果を残し続け、全日本選手権出場こそならなかったものの、前年屈辱を味わった東日本選手権では高得点をマークして9位に入った。 東北生活文化大にはスケート部がないため、インカレには大学から特別な許可を得て出場した。東北生活文化大の学生がフィギュアスケートのインカレに出場するのは初めてだったという。三浦は「大学の学長先生や先生方のサポートがあってのことなので、感謝しかないです」と口にする。 引退試合となった冬季国体は「丁寧に、慎重になりすぎた」と振り返るように、納得のいく演技ではなかった。それでも、都道府県の垣根を越えたスケーターたちの応援を背に、大勢の観客の拍手と歓声に包まれる舞台で滑ったことには達成感を覚えた。そして何より、幼少期から目指し続けた「誰かの心に残るスケート」が完結したと実感し、悔いなく氷上を去ることができた。
休学を経て再認識したかけがえのない「出会い」
「休学に対してはいろいろな考え方や意見があると思うんですけど、両親は賛成してくれて、大学の先生も背中を押してくださいました。大学に戻ってきた時も、同い年の学生が『おかえり』と声をかけてくれたのがうれしくて、復学を温かく迎えてくれる仲間に出会えたことに感謝の気持ちでいっぱいでした。学生生活から一歩離れたからこそ、周りの人に対して感謝できるようになりました」 フィギュアスケートと本気で向き合ったからこそ、スケート仲間やコーチらとのかけがえのない出会いに恵まれた。休学を経験したからこそ、スケート以外の面でも支えてくれる人たちへの感謝の思いが強くなった。歩んできた道に後悔はない。 今は明確な将来を思い描いているわけではないが、目の前の目標に向かって突き進んでいる。「10年以上やってきたスケートを通して学んだこと、休学を経て学んだこと、大学で勉強している専門知識や実習を通しての経験……。私がこれまで経験して学んだことを生かしながら、これからの人生につなげていきたいです」。三浦向日葵のスケート人生はいったん、完結を迎えた。だが、三浦向日葵の人生はまだまだ続く。そして咲き誇る。
川浪康太郎