自動車「下請け」の1割、価格転嫁「全くできず」 サプライチェーンは全国6万社、取引総額は42兆円規模
「下請けいじめ」是正へ 自動車業界で進む価格転嫁の取り組み状況が注目される
複数の取引先が関わるサプライチェーンは、自動車産業に限らず多くの産業で「二次取引以降の取引をすべて認知することは困難」という声も聞かれるなど複雑化しており、大手企業でも全容把握が難しい。自動車産業でもこれまでサプライチェーン全体での価格転嫁を推進し、発注側として積極的に声がけもしていたとみられるものの、三次・四次・五次と連なるサプライヤー企業の取引内容までこうした「号令」の影響が及びにくかったことが、結果的にサプライチェーン末端の中小下請け企業で価格転嫁が進まない一因となった可能性がある。 日本自動車工業会(自工会)は5月23日、部品メーカーを束ねる日本自動車部品工業会と連携して自動車産業のサプライチェーン全体で適正な取引を推進することを表明した。そのなかで原材料費やエネルギー費の上昇に対し適切なコスト増加分の全額転嫁を目指すことや、自工会が策定している「適正取引の推進と生産性・付加価値向上に向けた自主行動計画」にもこうした方針を盛り込むなど、自動車産業の頂点となる自動車メーカーが一丸となって適正な取引環境を実現する姿勢を明確に示した。今後は、これまで把握が難しかったサプライチェーン末端の企業にも、必要なコスト増分の価格転嫁を促す動きが高まるとみられる。自工会のこうした取り組みが、幅広い業界でサプライチェーン全体の価格転嫁を実現するモデルケースとなるか注目される。