早くきて!年金月15万円、老人ホームに預けた90歳「母本人」から緊急連絡…雨の中、息を切らして駆けつけた66歳娘が言葉を失ったワケ【FPの助言】
介護施設選びの難しさと日本の現状
厚生労働省の発表資料『特別養護老人ホームの入所申込者の状況(令和4年度)』によると、特養に入所を申し込んでいるものの当該ホームに入所していない人、すなわち「待機者」について、各都道府県が集計した結果をとりまとめています。 それによると「待機者」は減少傾向にあるものの、依然として特養の入所条件は厳しく、要介護3以上でなければ入所が難しい現状があります。データによれば、2022年度の特養の待機者数は約25万3,000人(うち在宅10万6,000人)に上ります。 入所の難易度は地域によって高低差があり、入所までの待機期間は申し込み順とは限りません。必要性の高い人から優先する流れになっていますが、ハルさんが暮らす都市部では待機者が多いのです。 このような背景もあり、要介護度が低い高齢者は、民間の有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅を選ばざるを得ない状況にあります。 民間施設の費用は高額で、月額20万円以上かかることも珍しくありません。ハルさんの年金は月額15万円、秋子さんは不足分を補うために毎月5万円以上の負担を強いられています。経済的負担に加え、母の不満やトラブル対応に追われる日々のストレスが続いていました。
適切な介護施設選び・家族間のコミュニケーションの重要性
ハルさんの様子が落ち着いたところで、秋子さんは不本意ながら話を聞くことにしました。その日は、スポクラ仲間がハルさんの大好きな練り切りを持って訪ねてきてくれたとのこと。一人では食べきれないと思い、ホーム内でお裾分けをしたところ、職員に回収されてしまったというのです。 「家(自宅)で暮らし続けてたかったのに強制的にホームにいれられて、しかも、お菓子を配っただけなのに取り上げられてヒドイじゃないの……」とぼやきます。 その様子をみて秋子さんはなにもいうことができませんでした。たしかに、両者の言い分はもっともです。 持ち込みの生菓子を勝手に配られて入所者が体調不良になったら困る、という施設側の立場。美味しいものをお裾分けしたかったという母の気持ち。そこには少しでも居心地のいい環境にしたい、という母の想いがあったのかもしれません。 ホーム選びは金銭面を考慮することも重要ですが、慎重に行う必要があります。複数の施設を見学し、費用やサービス内容、雰囲気を比較検討すべきでした。また、ケアマネージャーなどに納得いくまで相談してもよかったかもしれません。 さらに、介護においては、家族間でのコミュニケーションは不可欠です。秋子さん母娘は長年ギクシャクした関係だったといいます。母娘の歴史を他人が伺い知ることはできませんが、せめて人生の最終局面でお互いに後悔を残すことだけは避けたいものです。 三原 由紀 合同会社エミタメ 代表
三原 由紀