4年間でユーザー数は100倍! 1億人が使うビジネスツール「Notion」は何が魅力か
オンラインワークスペース「Notion」を提供するNotion Labsが、日本で初めてユーザーイベント「Make with Notion Showcase Tokyo」を開催した。同社のCTOら幹部が紹介したNotionの変わらない信念、そして最新機能をお伝えする。 【もっと写真を見る】
オンラインワークスペース「Notion」を提供するNotion Labsが、2024年11月7日、日本で初めてユーザーイベント「Make with Notion Showcase Tokyo」を開催した。開催に合わせて来日したNotion Labs CTOのファジー・コスロウシャシ氏、プロダクトマーケティング担当ヘッドのジョン・ハーリー氏がメディアのインタビューに応え、Notionの考え方や最新機能を紹介した。基調講演の内容と合わせてお伝えする。 創業10年目で1億ユーザーに到達、僧侶の“瞑想スケジュール管理”にも? Notionは今年、創業10年目という節目の年を迎えた。それにふさわしく、7月にはユーザー数が1億人の大台を突破。2020年時点の100万人から、わずか4年間で100倍の成長だ。10月には米国サンフランシスコで初めての対面型イベント「Make with Notion」を開催し、会場には45カ国から1000人超のユーザーが集まったほか、オンラインでおよそ3万人が参加したという。 日本で初開催のユーザーイベント、Make with Notion Showcase Tokyoに合わせて来日したコスロウシャシ氏は、「Notionと日本との親和性」を強調する。共同創業者であるアイヴァン・ザオ(Ivan Zhao)氏とサイモン・ラスト(Simon Last)氏が、Notionのプロトタイピングの多くを行った場所は日本だった。特に、京都で日本の美学や職人精神にインスピレーションを受けたという。 そうして開発されたNotionは、この10年間で大きな進化を遂げた。世界中に熱心なコミュニティも生まれ、コスロウシャシ氏は「Notionはもはやわれわれのものではない。皆さんのものになった」と語る。イベント名の「Make with Notion」にも、“ユーザーがNotionを作り、自分のものとして使う”という意味が込められているという。 ユーザーやユースケースもさまざまに拡大している。コスロウシャシ氏が「想像もしなかった」事例として紹介したのが、タイの僧侶たちによるNotionの活用だ。瞑想を行う時間のスケジューリング、雑事のプロジェクトマネジメントなど、あらゆる管理作業をNotionで行っている。さらには「Notionサイト」でWebサイトを公開したり、AIを使って過去の修行内容を検索したりしているという。 ユーザー企業も大企業からスタートアップまで幅広い。現在ではFortune 100企業の62%、Forbes Cloud 100企業の90%以上、Forbes AI 50企業の94%がNotionを導入している。 日本の企業ユーザーとしてはトヨタ自動車が紹介された。“かんばん方式”という生産管理手法を編み出したのはトヨタだが、「そのトヨタにデジタル版のKanbanボードを提供できることを誇りに思う」とコスロウシャシ氏は胸を張る。 無計画、無秩序に増える業務ツールの“スプロール現象”を解決したい Notionは活発な機能強化を続けているが、変わらない信念もあるという。創業時から解決したいと考えている課題は「ソフトウェアのスプロール現象」だ。業務に使うデジタルツールが、企業内で無計画、無秩序に増え続ける状況を指している。 コスロウシャシ氏は「1つの企業が平均で88以上のツールを使っている」と指摘する。ユーザー自身でカスタマイズができないため多数のツールを使わねばならず、情報のサイロ化が起きている。大きなコストがかかるうえに、ユーザーは必要な情報を簡単に得られず、生産性の低下にもつながっている。 こうした現状に対して、Notionは“レゴブロックのアプローチ”で解決に挑む。「テキスト編集」「チャート」「データベース」「自動化」といった共通のブロックを組み合わせることで、ユーザー自身が使い勝手の良いツールを作り、使うことができるようにする。 「ユーザーのニーズと役割に合わせて、同じブロックを、オンボードにも、プロジェクト管理にも使うことができる。レゴのように美しく、オリジナルなものを作ることができて、望むならば複雑なものも作れる。これにより、企業は個人の潜在的な可能性を解放できる」(コスロウシャシ氏) メール体験を刷新する「Notionメール」など新機能を紹介 Notionでは今年、80もの機能改善を発表している。その中には先述した「Notionサイト」なども含まれる。ハーリー氏は、10月の米国イベントで発表された最新機能を中心に紹介した。 新機能で最も目を引くのはメールアプリの「Notionメール」だろう。これはNotionが2月に買収した、エンドトゥエンド暗号化を特徴とするSkiffをベースとしたメールクライアントとなる。 ハーリー氏は「メールは世界10億人が毎日使うツールだが、この20年間変わっていない」と指摘し、Notionメールはこれまでのメールとは異なる体験を提供すると語る。Notionの一部に組み込まれ、メールの下書きやインボックスの整理をNotion AIに手伝ってもらうことができる。もちろんデザインにもこだわっているという。 そもそもなぜメール機能を提供しようと思ったのか。そう尋ねたところ、ハーリー氏は「(現在のメールに対する)ユーザーの満足度は低い。われわれは直感的で美しいメールプロダクトを構築し、Notion AIを活用して顧客にバリューをもたらす」、そしてコスロウシャシ氏は「Notionはナレッジマネジメントなどの分野を再考案した。同じことをメールでも行う」と、それぞれに自信を見せた。 さらに、Notionワークスペース上で利用できるNotion AIを、質問回答、要約、翻訳、下書きなどができる“オールインワンのAI”として刷新している。また、新たにGoogle DriveやSlackとの連携機能も追加され、さらに体験が改善されると説明した。 Notion AIを活用する国内企業の事例として、大阪ガスが紹介された。同社のNotion AIを導入したチームは、導入していないチームと比べて情報検索にかかる時間を35%削減できたという。 このほか、アンケートの作成や回答の分析を行う「Notionフォーム」、レイアウトの高度なカスタマイズを可能にする「Notionレイアウト」、クリエイターが作成したテンプレートを販売する「Notionマーケットプレイス」なども紹介した。 文● 末岡洋子 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp