<映画評>『ウォルト・ディズニーの約束』名作の裏にあった約束
舞台は1960年代のロンドンとロサンゼルス。ウォルト・ディズニーは、それまで20年もの間、児童書「メアリー・ポピンズ」(映画版は「メリー・ポピンズ」) の原作者P.L.トラヴァースに、作品の映画化の話を持ちかけては断られていた。ようやく話し合いに応じてもらえたはいいが、彼女は「アニメーションやミュージカルはダメ」と条件を加えていき、なかなか具体的な話になっていかない。ディズニーは途方に暮れますが、トラヴァースが「メアリー・ポピンズ」に込めた思いを知り、「ある約束」をする……。 「メリー・ポピンズ」(1964年)は米アカデミー賞5部門を受賞した映画で、アニメーションと実写の合成やさまざまな歌やダンスなど、当時としては、斬新な演出を行い、多くの話題を呼んだ作品だ。今から半世紀前に製作された作品の背景を描いた、今回の「ウォルト・ディズニーの約束」。当時の作品を見たことがない人にとっては、とっつきにくいかもしれない。しかし、エマ・トンプソンやトム・ハンクスの名演、ディズニーランドなどで一度は耳にしたことがある名曲など、どこか懐かしさ、親しみさがある。初めて「メリー・ポピンズ」を知った人でも十分に楽しむことができ、本作品をみた後は、「メリー・ポピンズ」を絶対に見たいという衝動に駆られるだろう。 この映画に表現されたものの範囲だけでなく、現実の世界において、ディズニーが交わした“約束”が「トラヴァースの納得いくかたち」で果たされたかどうかは分からない。トラヴァースは、映画にアニメーションが使われたことや一部の登場人物の描き方に失望したなど映画『メリー・ポピンズ』に対し、「納得していない」という逸話は少なからず、残っている。 それでも、トラヴァースと「メアリー・ポピンズ」の関係をこの映画で知り、また、この映画の原題「Saving Mr.Banks」(バンクス氏・トラヴァースの父親を救済する)を考えると、本当に約束が果たされていることを願いたくなってしまう。 ディズニーとトラヴァースの複雑な心境についてはともかく、この作品は最後の最後までじっくりと見てほしい。 トラヴァースを演じたエマ・トンプソンの名演を見えれば、彼女がどんな人物だったか、どういう思いがこめて作品作りをしていたかがわかるよう、見事に仕上がっている。 ■予告編 ■公開情報 『ウォルト・ディズニーの約束』:公式サイト 配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン (C)2013 Disney Enterprises, Inc. 3月21日(金・祝)ロードショー