【月刊ラモス】「W杯4強の力ある」日本代表の戦いぶり高評価もただ一つの不満…藤田譲瑠チマを試してほしい
W杯アジア最終予選を2連勝、それもホームの中国戦に7―0、アウェーのバーレーン戦に5―0と圧勝してスタートした日本代表。月刊ラモスのラモス瑠偉編集長は「日本の時代が来た。もはやアジアのレベルを超越している」とその進化ぶりに目を見張り、「いまの戦いぶりを見ていると、W杯4強の力があるのではないか」と高く評価した。それだけに「次のアウェー・サウジアラビア戦もボコボコにやっつけてほしい。そうすれば本物」と大きな期待を口にした。 ◇ ◇ ◇ アジアカップでイランに敗れ、準々決勝敗退してから、日本代表は一気に進化していた。中国、バーレーンのレベルが低かったとは言え、あそこまで完璧にたたきのめすのは、なかなかできることではない。 まずは多くの選手が欧州のトップリーグで、それも主力として活躍するようになり、個々のレベルが大幅に上がっている。特に今回は個の力で突破できる伊東と三笘が戦列に復帰し、攻撃の幅が一気に広がった。そのほか、DFでは町田が大きく成長し、冨安がいなくてもまったく不安を感じさせなかった。中盤もようやく南野が目覚め、攻撃だけでなく守備でも貢献するようになった。上田を含め、前線と中盤の選手が連係し、ボールを失った瞬間にプレスをかけ、相手陣内で即座にボールを奪い返す。 相手陣内のセンターサークルよりさらに深い位置に3バックがラインを形成し、その前にボランチ・遠藤が陣取ったダイヤモンドは強固。さらに前線の選手も連動して相手陣内で分厚いブロックを形成し、ロングボールを蹴る時間とスペースを与えない攻撃的な守備で、相手にサッカーをさせない。たまにカウンターを食らいそうになっても、3バックでワントップに対応し、シュートまで持ち込まれるシーンはほぼ、なかった。 アジアカップではロングボールでDFラインの背後を狙われ、押し込まれたところでミスが発生し、カウンターを食らったが、今回はその反省を生かし、まったくスキを見せない完璧な戦いぶり。W杯2次予選の”消化試合”2試合も欧州組の主力選手を招集し、ほぼベストメンバーを組んでチーム戦術の熟成を図り、アジアレベルでは異次元のサッカーを見せつけている。 W杯カタール大会でドイツに勝ち、スペインに勝ったことで、ちょっと自信過剰になっていたのかもしれない。そこでたたかれて目が覚め、その後はグンと伸びた。逆にアジアの上位レベルは下がっており、例えばオーストラリアやサウジアラビアは世代交代に失敗して最終予選で苦戦を強いられている。いかに育成が重要かを物語る現象で、中国や他の中東諸国のように多くの外国人に国籍を取得させ、代表を強化しようとしてもうまくいかないことを示している。Jリーグ誕生から30年以上かけて育成に注力してきた積み重ねが、この違いを生み出している。 その成果が、例えば久保、堂安、鎌田、中村、旗手を含めた中盤の分厚い選手層だ。代表内での競争が激しくなり、さらなるレベルアップにつながっていく。同時に高いレベルで2チーム分の戦力がそろいつつある。W杯という短期決戦を戦い抜く準備が、着々と進んでいる。 次のアウェー・サウジアラビア戦でも一方的な試合にする力は十分にある。いまの日本に勝てる可能性があるのはイランくらいだろう。世界に目を向けても、圧倒的なスピードを誇るフランスと個人技が高いブラジルには苦戦を強いられるかもしれないが、それ以外のチーム、スペイン、ドイツ、イタリア相手なら互角以上の戦いができるだろう。組み合わせ次第で、W杯ベスト4に入る力は十分にあるのではないか。いまのサッカーの熟成度をさらに高めていけば、世界をアッと驚かせることも不可能ではない。 ただ、ひとつだけ不満がある。なぜ藤田譲瑠チマがA代表に呼ばれないのか。W杯アジア最終予選では若手を試す余裕ができた。今回は20歳のDF高井を途中出場させるなど、将来を見据えた代表招集、起用もあった。 森保監督にはぜひとも藤田を招集してほしい。パリ五輪予選、パリ五輪では、ずばぬけたプレーを見せてくれた。確かに実績では遠藤が上だ。鎌田や守田、板倉もボランチができる。ただ藤田には、最終予選から代表スタッフに就任した長谷部コーチに匹敵する可能性を感じる。彼は守備だけでなく、パスの能力も高い。特にボールを奪い取ってからの縦パスは、目を見張るものがある。 遠藤も31歳になった。いまがもっとも脂がのっている時期だが、ポスト遠藤という意味で、22歳の藤田をいまの段階から代表に呼んで、彼のプレーを見てほしいのだ。彼は十分に日本代表で通用するし、大きな戦力になると確信している。 10月11日(日本時間)にはサウジアラビア戦、15日にはオーストラリア戦が行われる。日本代表がどんな強さを見せてくれるのか、楽しみでしょうがない。 (元日本代表)
中日スポーツ