現役続行を決めた45歳の葛西紀明は2022年北京五輪に出場可能なのか?
「限りなく、そうですね、50歳まで飛びたいんですよ」 ことあるごとに、葛西紀明(45、土屋ホーム)は、こう言っていた。 冬季五輪最多となる8度目の五輪で2大会連続のメダルを持って帰ることはできなかった。 だが、90年代に“カミカゼ・カサイ”と呼ばれ、今“レジェンド”と呼ばれる葛西は意気軒高だ。 まさしく読みにくい強風が終始、吹きつけていた平昌五輪。葛西はノーマルヒル個人戦では方向が定まらない強風に泣かされ失速、21位に終わった。次のラージヒル個人戦は、追い風をまともに受けて、はらはらと落ちてしまい、33位とさらに成績を落とした。最終のラージヒル団体戦でも全身に張りがなく、そこに追い風がのしかかってきて、ごく普通のジャンプになってしまった。これではメダル獲得は難しい。団体戦ではノルウェーが金、ドイツが銀、ポーランドが銅とジャンプ強豪国に表彰台を占められた。あくまで、したたかに混戦に持ち込み、そこから各選手が突き抜けていくジャンプをしていかなければメダルの望みはなかった。 戦い終えた葛西の心中にあったのは、悔しさだけだった。 「こうなれば北京でメダルを目指します」と、目標をきっぱりと言い定めた。 次の2022北京五輪に出場するという宣言だった。 前代未聞ともいえる目標は、現実問題として実現可能なのか。 気になるのは、北京五輪のときの葛西の年齢が49歳であることだ。 近年は夏場から秋口にかけてベスト58キロへの減量に取り組んでも、なかなか体重が落ちにくくなってきていた。それも60キロ前後で足踏みが多々あった。そこで幾度となく絶食を繰り返し、最初は好きではなかったブラックコーヒーをがぶ飲みして、胃のなかの空腹感を紛らわす回数も増えてきた。 しかし、葛西には五輪初出場(1992年アルベールビル)から26年の大いなる経験値がある。 それは試合中の駆け引きや、あえてトライアルジャンプをキャンセルして、1本目の飛びにかけていく、そういう高い集中力などであった。 さらには身体の鍛え方として、たぐいまれなるボディバランス、筋力強化、バーベル上げ、スクワット、スラックライン、なわ跳びなどを積極的に行ない、体に負荷をかけてしっかりと仕上げていく、その過程までをも楽しんでいた。シーズン中には飲んでもワインに口をつけるくらいの節制はもちろん、早寝早起きでストイックに日々を過ごしている。