「1年目で月収50万」「入社祝いに株をもらえる」「好きな時に休める」変わるタクシー運転手業 “おじさんの終の仕事”から、“若者に魅力的なスマートな仕事”へ…それでも辛い瞬間とは【タクシーの日】
タクシー運転手という職業が見直されている。給与水準が高く、休みも取りやすく、煩わしい人間関係がないと若者たちの人気の仕事になりつつあるという。変わっていくタクシー運転手のイメージについて取材した。 【写真】若手同士仲がいい大和自動車交通の新人たち
おじさんの終の仕事から、若者にとってのスマートな仕事へ
職を転々としたおじさんが、「しょうがないから、タクシーの運転手でもするかな」とつぶやく。ドラマや映画、マンガなどでこれまで描かれてきたタクシー運転手のイメージである。 「給料が低そう」「休みが取りにくそう」「深夜まで働いている」…日本ではそんなイメージが定着し、タクシードライバー=おじさんの終の仕事”だと思っている人が多いのは事実。 だが都内のタクシー会社で働く若者たちにとっては、そのイメージは過去のものになっている。2023年に大和自動車交通に入社した新卒2年目の2人に話を聞いた。 前田永遠さん(写真左)と早乙女陽美さん(写真右)も、就職活動を始める前は、似たようなイメージを持っていたという。 「タクシー乗り場で新聞を読みながらお客さんが来るのを待って、自分の番が来たらお客さんを乗せて目的地まで走らせる。車内は少しすっぱい臭いがして…。田舎育ちの僕は、失礼ながら適当な仕事なんだと思っていました(笑)」(前田永遠さん) 「就活中公務員志望の友人に、“試験に落ちたらどうするの?”と尋ねたら、“タクシー会社から内定をもらっているからそこに行く”という話を聞いて、“そこで初めて意識したくらい、自分とは縁のない男社会の仕事だと思っていましたね」(早乙女陽美さん) たしかに業界ではいまも男性の運転手が圧倒的に多い。だが2013年と比較すると、2023年の女性ドライバーの総数は、2.03%から4.2%に倍増(※1)。また、新卒採用者数も右肩上がりで、2021年には全国で1000人近い数にまで伸びているのだ(※2)。 なぜ若者の就職先としてタクシー運転手が選ばれ始めたのだろうか。
若者にとって理想的な労働環境
「自由に休みが取れるし、福利厚生が充実しているというのもこの会社に惹かれた理由の一つです。入社祝い金に加えて会社の株をもらえたのも嬉しかったですね。 あとは同世代の友人と話をするたびに、上司が…取引先の人が…と愚痴をこぼしてくるんですけど、タクシー運転手はひとりで仕事するのが基本なので人間関係で悩むことはないんです。面倒な人とやりとりを続けるのは辛いんだなと知りました」(早乙女陽美さん) 「幼いころからサッカーのプロを目指してきたんです。プロ選手にはなれませんでしたが、趣味としては体が動く限り続けたくて。仕事のやりがいと同時に、好きなときにサッカーが出来るというのが会社選びの第一条件でした。趣味との両立がさせやすいなと思ったのも惹かれた理由です」(前田永遠さん) また給与水準も同年代と比べると、頭ひとつ抜けているという。 「50万円くらいはもらえるよと、先輩に教えていただいていたんですが、半分冗談だと思っていたら、現場に出てすぐ本当にその金額をもらえたのでとても驚きました」(前田永遠さん) 「研修期間から貯めていた分と、乗務員としてデビューしてからの給料を加えて、欲しかった車をキャッシュで買っちゃいました」(早乙女陽美さん) 2023年のリクルートの調査※3によると、入社3年以内に自己都合退社をした若者の約25%が、「労働時間の長さ」や「休日の取りにくさ」など労働条件を理由に退職しており、若い世代はプライベートの充実を含めた幸福度を大切にしていることがわかる。 また、同アンケートによると「給与水準に満足できない」が18.4%、「職場の人間関係がよくない、合わない」が14.5%、「上司と合わない」が14.5%、「希望する働き方ができない(場所、時間、副業など)」が14.5%となっている。 ある程度好きな日に働くことができ、同世代と比較しても給与水準が高く、福利厚生が充実しており、面倒な人間関係に頭を悩ませることもないのであれば、タクシー運転手が若者に支持されている理由にも納得だろう。 だが業界の取り組みはこれだけにはとどまらない。
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