「日給社宅」に「外勤」など~日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』からひも解く長崎・端島の文化と社会構造
島全体が企業の私有地だったため、全ての住居は社宅や寮。炭鉱業で高収入が担保され、生活費も安くあがっていたことで、島民たちは豊かな生活をおくることができた。最先端の電化製品の普及は東京よりもはるかに早かった。一方で、「社外者」は会社の福利厚生を受けられなかったため、その生活は「職員」や「炭鉱員」らほど裕福ではなかったといわれている。 ■キーワードでひも解く端島…主人公が従事する“外勤”の仕事内容 ここからは、特殊な環境で暮らしていた鉄平たちの暮らしをひも解くために、劇中に登場した場所やワードを、実際の端島とリンクさせながら振り返ってみよう。 ◆ドルフィン桟橋 端島には数々の“日本初”がある。第1話冒頭で帰島した鉄平や幼馴染・賢将(清水尋也)などをはじめ、訪れる人々が最初に降り立つ島の入り口・ドルフィン桟橋もその1つ。防波堤などがない沖合に杭を打ち込んで作られた係留施設で、波や潮の干満に合わせてタラップが上下する構造を兼ね備えている。本来はタンカーが石油の荷役を行うために使われることが多い技術だが、防波堤のない端島では、人間が乗り降りするときにも使えるのではないかという発想で造られた。ちなみに、現存しているドルフィン桟橋は3代目。初代と2代目は、台風により流されてしまったという。黒沢氏曰く日本全国どこを探しても、この方式で人が船を乗り降りするのは端島だけなのだという。 ◆銀座食堂 杉咲花演じる鉄平の幼馴染・朝子が働く「銀座食堂」は、端島に実存した「厚生食堂」がモデルとなっている。劇中の鷹羽鉱業のように、1950年代当時に端島を所有していた企業の福利厚生施設としてできた食堂で、戦後「社外者」に委託されたが、慣れ親しまれた屋号はそのまま残すことになった。 家庭のある人たちは基本的に自宅でご飯を食べていたため、単身の炭鉱員が訪れることが多かった。ちゃんぽんやうどんをはじめ、親子丼、豚丼、パンやかき氷まで提供し、幅広く島民の食生活に貢献していた。