全国で2番目に小さな町 奈良県三宅町長の「小さいからできる」戦略
まちづくり会社をどう設計するか
■まちづくり会社をつくる 地域課題とどう向き合うか 森田:国の交付金も活用しながら予算も取って進めています。奈良県はあまりスタートアップがありませんでしたが、三宅町がまた面白いことをやっていると面白がってもらって、企業版ふるさと納税で企業から協力してもらうような流れもできました。 先ほどお話した新規事業以外にも、地場産業であるグローブを作っている会社と手のデータを取る仕組みを持っている会社が連携を始めました。元々持っているデータを活かすために、グローブのオンラインオーダーシステムを開発し、世界の市場を狙いにいっています。 地場産業が衰退しかけているなかで、新しい市場を生み出したり、テクノロジーを使って新しい顧客開拓をしたりすることを通して、三宅町にある産業が儲けられるようになる。みんながwin-winになる取り組みを考えてくれることが面白いと思っています。 山田:これまでであればマッチングしないような企業群に、若い人や他の会社の方が連携する流れがあるのはすごくいいですよね。 森田:今は、まちづくり会社をどう設計するか話し合っています。 三宅町は10年後、人口が1000人減ると推計されています。高齢の方が亡くなっていくものの子どもが生まれないという少子高齢化が背景にはあります。そうなると、いま高齢の方が地域で担ってくれている草刈りや自治会活動などの力が弱くなっていきます。 大きな課題で言えば、耕作放棄地と空き家問題。行政資産として買うことはできますが、どの土地や空き家を買うかも含めて個人資産に対する行政の関わりはなかなか難しいので、課題の解決がしにくいんです。 ビジネスで解決するしかないのではないか?というところから、まちづくり会社で担っていけたらと考えるようになりました。ビジネスを通じて持続可能な農業をすることで、1800年以上お米を作ってきた土地として、日本の原風景を後世に残していくことも実現したいです。 ■住民がまちづくりの担い手に「自分ごと化」の進め方 森田:これから、まちづくりを「自分ごと化」する人を増やしていきたいです。 市民と行政の距離が近いがゆえに、住民は役場がなんでもやってくれると思っていたり、声の大きい人たちの声が通ってきたと思われていることがダサいと思うんです。 行政がなんとかしてくれると考えるのではなく、町の中心は住民であり、住民がやっていることがまちづくりになっていくと思えるようにしたい。今は、浸透しているところもあれば、まだまだ行政に言えば聞いてもらえると思っている人たちもいるので、狭間のところにいるんだろうと思います。 山田:行政が担う、民間が担う、一緒にやるという選択肢やグラデーションがあると思っています。行政が担うべき福祉の部分との線引きはどうやっていくのでしょうか? 森田:線引き自体が邪魔だと思っているので、もっと曖昧になって混ざり合うことで面白い世界ができるんじゃないかな。線を引くことで、こっち側が自分で向こう側があなたたちと分けてしまうのではなく、一緒にできないかを探していくようなイメージです。