ヒズボラのポケベルはどうやって「爆弾」になったのか
サプライチェーンのどこかで小型の爆発装置が仕掛けられたもよう
■サプライチェーン攻撃 推測されるのは、ヒズボラがサプライチェーン(供給網)攻撃を受けて、製造時もしくはメーカーからユーザーへの輸送中にポケベルに爆発装置が仕掛けられた、というものだ。使われたポケベル「AR-924」は重量わずか95gということなので、非常に小型の爆発装置が必要だっただろう。 これまでに実戦使用された最小級の対人爆発装置には、米軍がベトナムで用いたBLU-43地雷、通称「ドラゴントゥース(竜の歯)地雷」などがある。BLU-43はカエデの種のような形をした左右非対称の5cmほどの地雷で、空中からばら撒かれて小道を通行できないようにした。重量は20g足らずで、9gのニトロパラフィン液体爆薬が装塡されている。これくらいの量の爆薬ならポケベルにも仕込めるはずだ。 BLU-43は、踏んだ人を死亡させるよりも足を負傷させることが多かった。ロシア軍はその自国版をウクライナで使用している。PFM-1地雷、通称「花びら地雷」、あるいは「グリーン・パロット(緑のオウム)」だ。液体爆薬量は37gとBLU-43よりも多くなっている。ウクライナでの地雷使用に関するヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)の報告書が指摘するように、PFM-1も通常、兵士を即死させるのではなく「足(くるぶしから下)もしくは下腿(かたい、膝から下)の外傷性切断」という重傷を負わせている。 米軍はベトナム戦争中、竜の歯地雷よりもさらに小さい空中投下地雷も使用している。「グラベル(小石)地雷」や「ボタン爆弾」と呼ばれたこれらの爆弾は、切手大くらいのサイズのキャンバス製パウチ(容器)に、衝撃に反応する爆薬を詰めただけのもので、クラスター爆弾で千個単位で散布された。地雷本体は液体に浸されていて、投下後、液体が蒸発し、地雷が作動状態になる仕組みだった。 グラベル地雷は普通、9gのアジ化鉛/RDX爆薬が詰め込まれていたが、有効性は低く、米空軍も「邪魔になる程度のもの」と称していた。ベトコン(南ベトナム解放民族戦線)の斥候が踏んだ際に、その存在を知らせる警告になるというのが主な機能のひとつだった。 米国はより最近の研究で、ドローン(無人機)作戦向けに超小型で、おそらく有効であろうマイクロ弾薬を開発している。ただ、その実態はほぼ機密のベールに包まれている。