地震発生時の負傷者30%以上が「家具転倒」が原因 家具固定“効いた”状態にするための正しい方法とは?
究極の転倒防止策とは…?
ここまで「家具を固定する」という視点で書いてきたが、実は固定する以外にもできる対策がいくつかある。 まずは寝室やリビングなど、人が長時間居る場所“以外”に家具を移動できないか検討しよう。 また、家具を配置する向きも重要である。家具は長手方向には倒れにくい。人がいる場所に倒れない向きにすることで、下敷きになるリスクを下げられる。ただし、倒れた家具が出口を塞いでしまうように置くと、避難の妨げになる可能性があるので、人が居なくてもこのような場所は避けよう。 次に家具の中身を軽くすること。重いものは下に、軽いものを上に置くだけでも倒れたときのダメージを減らせる。家具の中に怪我の原因になる割れ物などが入っている場合には、揺れで扉が開かない工夫をしておくと良い。中身を減らせるなら、大きい家具から小さい家具に買い替えても良いだろう。 そして、究極の転倒防止は、「家具をなくすこと」である。「いつか使うかもしれないもの」は「ずっと使わないもの」である。この機会に断捨離をして家具をなくし、部屋を広く使うようにしてはいかがだろうか。 地震で怪我をする人の約3~5割は、倒れてきた家具によって怪我をしている。 大地震の時は同時にたくさんの怪我人が発生するし、病院や医療スタッフも被災しているので、迅速で適切な治療は期待できない。怪我は津波や火災から逃げ遅れる原因にもなる。つまり、普段ならどうってことのない怪我でも、災害時には命取りになる可能性がある。だから災害時は平時よりもずっと「怪我をしない」ことが重要である。 怪我をする人が減れば、その人を助けたり治療したりするリソースを他の被災者に向けられる。あなたが怪我をしないことは、あなた自身を守るだけではなく、他の誰かを助けたり地域の復興を早めたりする。自分が怪我をしないために、そして地域みんなのために、家具の配置や固定方法を今一度見直して、リスクを減らすようにしてほしい。
島崎 敢(しまざき かん) 1976年東京都生まれ。早稲田大学大学院にて博士(人間科学)取得。同大助手、助教、防災科学技術研究所特別研究員、名古屋大学特任准教授を経て、近畿大学准教授。元トラックドライバー。全ての一種免許と大型二種免許、クレーンや重機など、多くの資格を持つ。心理学による事故防止や災害リスク軽減を目指す研究者で3人の娘の父親。趣味は料理と娘のヘアアレンジ。著書に「心配学~本当の確率となぜずれる~」(光文社)等。
島崎敢