中国新興EV「極越汽車」も経営危機に 複数部門解散、CEOが従業員に包囲され大揉め
中国でまた一つの新興EV自動車メーカーが経営危機に陥った。12月11日、極越汽車(Jiyue Auto)の夏一平CEOはビデオ会議を通じて、会社の経営が困難な状況に直面しており、早急な事業再編が必要であることを明らかにした。 そして、11月分から従業員の社会保険料納付を中断し、12月分の給与支給も延期すると説明。自発的に離職する従業員には「N(勤務年数)+1」を基準で算出して補償金を出すと提示したものの、具体的な支払い時期は示されていない。
実は12月10日午後から、同社内部で「週内に完成車事業の閉鎖」や「株主からの追加投資停止」などの噂が広がっていた。これに先立ち、すでに生産部門でリストラを開始した。また、ビデオ会議が開催された時点で、納車部門など複数の部門が現地解散したという。さらに、このニュースを受けて極越汽車のディーラーの一部も営業を停止した。 極越汽車の前身は、2021年1月に中国ネット検索最大手の百度(バイドゥ)と自動車大手の吉利汽車(Geely Automobile)が共同で設立したEVブランド「集度汽車(Jidu Auto)」で、23年8月に極越汽車と改称した。初の量産車「極越01」は23年10月末に正式に発売されたが、販売は振るわないまま。 24年9月、第2弾モデル「極越07」を発売し、19万9900元(約420万円)からの価格と百度のスマートドライビング技術搭載を目玉にしたこともあり、極越汽車は発売後48時間以内に5000台以上を受注したと発表した。 しかし、販売統計によると、昨年12月から今年11月までの1年間で、極越汽車の月間販売台数は最も少ない月がわずか147台で、最多の月でも3000台に達しておらず、12カ月間の累計販売台数はわずか1万4055台だった。通常は月に1万台以上の販売が当たり前の他のトップクラスの新興メーカーと比べると、まだまだ大きな開きがある。 極越汽車は2024年初めに外部から資金調達を計画していたが、中国EV市場の競争が激化する中、資金繰りには厳しさを増している。今年に入り、「HiPhi(高合汽車)」が事業再編を発表し、「哪吒汽車(NETA)」も人員削減や給与カットなどネガティブな情報が絶えなかった。 このような環境下では、ホットマネーの投資はもはや流入せず、EV市場では「資本の冬」に突入したと指摘されている。 極越汽車の資金調達も、結局その後進展はなかったようだ。 また、合弁ブランドであるため、多くの決定事項で意見の対立が生じることは避けられない。 百度と吉利にはそれぞれの思惑があり、戦略面での高いレベルでの意思統一を図るのは難しいと言われている。 そのため、極越汽車にキャッシュフローの断絶が発生した際に、市場では百度や吉利からもはや「救済」の声が聞こえてこないことから、極越汽車は「捨て駒」のように見捨てられたとの見方が広がった。 事業再編を発表した翌日には、夏一平CEOは本社の事務所で多くの従業員に囲まれ、一部の従業員は現場の様子をライブ配信するなど混乱が広がっている。夏氏は極越汽車の閉鎖や操業停止を否定し、継続的に資金調達に向けて努力すると強調したが、従業員の高まった感情を鎮めることはできなかったようだ。 中国の新エネルギー車(NEV)業界は、現在業界再編の新たな局面にある。企業情報検索サイト「天眼査(Tianyancha)」のデータによると、中国国内の新エネ車の企業の数は、2021年の300社余りから2024年には50社に満たない数に減少した。 深度科技研究院の張孝栄院長は、2025年には自動車市場の価格競争が例年よりも早い展開となる可能性があるとみている。 新エネ車とガソリン車のシェア争いと価格競争が激化する中で、2025年、26年には自動車市場における企業の競争の構図が徐々に明確になり、優勝劣敗の状況が加速することが予想される。 *1元=約21円で計算しています。 (36Kr Japan編集部)