手順(9月10日)
民族衣装に身を包んだかわいらしい女の子。体をひねると一回り小さな人形が次々に現れる。「マトリョーシカ」は、ロシアを代表する木工民芸として知られる▼謎が多く、歴史は19世紀末までしかたどれない。農村発のおもちゃではなく、都会の店で売る目的で考案された(熊野谷葉子著「マトリョーシカのルーツを探して」)。起源は箱根の入り子人形との説もある。片付けるのに小さな順から収めていくため、子どもの整理整頓の勉強にもなる▼こちらの順番ミスは波紋を広げた。東京電力は福島第1原発2号機からのデブリ取り出しで、使用するパイプの接続順を間違え、作業を延期した。取り付け順を示す番号を確認しにくい状況だった―。釈明の言葉は、どこか言い訳じみる。現場を協力企業に任せきりで、「丸投げ体質は変わらない」との指摘も。きょう10日に再開するという。今度こそ、手抜かりなく、と願うばかりだ▼日付が変われば災厄から13年半。東電は「福島のために」を前面に訴え続けてきた。足元を見詰め直してほしい。小さな仕事から着実にさばく。その積み重ねの先に復興はある。県民の不信は玩具のように、たやすくは収まらない。<2024・9・10>