「ゴジラ」ロケ地 旧岡谷市役所庁舎の耐震工事完了 往時の雰囲気そのままに 長野県
長野県岡谷市が進めていた旧市役所庁舎(国登録有形文化財)の耐震改修工事が完了し、20日、報道向けに公開された。旧事務室内の2カ所、旧宿直室と旧用務員室にそれぞれ1カ所、既存の梁や柱の間を埋めたり、壁ごと取り換えたりするなどして耐震壁を設置。耐震壁はしっくい調の塗装にするなど往時の雰囲気を残した。今後、市民参加で保存と活用を図っていくことにしている。 工事は5月29日に開始。耐震壁は鉄筋コンクリート製で、工事により構造耐震指標(Is値)を現在の0・443から法定基準の0・6を上回る0・694に強化した。総事業費は約7575万円で9割を市債、1割を「旧岡谷市役所庁舎保全基金」から充てる。 旧市庁舎は1936(昭和11)年築で鉄筋コンクリート造りの2階建て(延べ床面積1550平方メートル)。当時は珍しい水洗トイレや全館集中暖房も導入された。近年は米国アカデミー賞視覚効果賞を受賞した映画「ゴジラ―1・0(マイナスワン)」のロケ地としても注目が集まっている。 今回の工事では、床暖房に使われたとみられるラジエーターが床下から9本が見つかっており、いつ頃導入されたのか調査中。官庁で昭和の早い時期から使われていれば珍しい事例と推測されるため、このうち1本は来館者が見学できるよう床を強化ガラスにして照明を取り付けた。 天井の照明を蛍光灯からペンダントライトに取り換えたり、耐震壁工事のために取り外した腰板も再利用したりと、竣工当時の様子に近づける工夫も行っている。市企画課では来年度からワークショップを開いて市民とともに床の塗装や窓の清掃などに取り組んでいく考えで、「市民にこの建物についてもっと知って愛着をもってもらえれば」と期待している。