【イベントレポート】「雨の中の慾情」成田凌のこだわりはひじを曲げない走り方、片山慎三作品の大変さ明かす
第37回東京国際映画祭のコンペティション部門に出品されている「雨の中の慾情」が、本日10月30日に東京・TOHOシネマズ 日比谷で上映。キャストの成田凌、中村映里子、李杏が上映後の舞台挨拶に登壇した。 【写真】眼鏡をかけた成田凌 つげ義春のマンガを「岬の兄妹」「さがす」の片山慎三が映画化した「雨の中の慾情」。売れないマンガ家の義男、艶めかしい魅力をたたえる離婚したばかりの女性・福子、自称小説家の伊守が激しい性愛で交わっていく奇妙な共同生活が描かれる。日本と台湾の共同製作作品で、大半のシーンが2023年3月に台湾で撮影された。成田が義男役、中村が福子役で出演。台湾から参加した李杏は、森田剛演じる伊守の妻・春美(シェンメイ)を演じた。 午前中の上映となった同作。成田は冒頭で「朝早くから観る映画ではないと思うんですけどね。入ってきたときに、(観客に)お疲れムードを感じました(笑)」と話して笑わせる。そして出演を決めた理由を「観ていただいた通り、片山さんの作品って生半可な気持ちじゃできないんですよね。やっぱりこの仕事をしていたら、こういう映画をやりたいなと思ったんです」と明かした。中村は「岬の兄妹」のオーディションから片山と縁を紡ぎ、2020年公開の短編「そこにいた男」にも出演。オファーを受けた際「片山さんなら絶対にやりたい」と思ったと言い、さらに「台本をいただいて、難しいというか、『どんな内容になっていくのか』と想像しづらい部分もあったけど、ベースにはつげさんの原作のキャラクターのユニークさ、世界観をすごく感じて、これは面白そうだなと思いました」と語った。 本日は観客からの質問に3人が答える、ティーチインも行われた。役作りについて監督からどんなディレクションがあったかを問われると、3人からはユニークな回答が続出。成田は「いろいろありますけど、主に走り方ですかね。監督からはまず、ひじを曲げない走り方をしてほしいと言われました。そこは『義男が生活の中でどういう人間なのか』が出る部分で。僕と監督の意見も一致して、そこで義男が完成したと思います」と答え、李杏は「『目を瞬くスピードをゆっくりにしてください』と言われました。そんなふうに言われることがこれまでまったくなかったので驚きましたが、やってみてすごく面白かったです。監督の頭の中に、観客の皆さんに役者の演技をどういうふうに見せるのかが、はっきりとあるんだと思います」と振り返った。また中村は「とにかく明るく演じてほしいと言われたので、リアルというより少し大げさにやることを意識しました。あと福子はとても汗っかきという設定で、オイルをたくさん付けて演じたので、そこもポイントになっていると思います」と答え、それぞれが演技のディテールに至るまで、片山から細かいディレクションを受けたことをうかがわせる。 「映画の中で、自分以外の役で演じてみたい役は?」という質問には、成田が苦笑いしながら「僕はもうやりたくないです。大変だったから……。すべてを出し切りました(笑)」と吐露し、観客から笑いが起こる。さらに成田は、台湾での撮影について大変だったことは特になかったと話し、「海外だからというより、片山慎三監督だから大変だったと思います(笑)」とも話していた。中村は撮影中の寒暖差の激しさを挙げて「台湾でこんな寒い思いをするとは思っていなかったです」と述懐。これには李杏も「深夜まで撮影が続いたときは、台湾に慣れた私でも寒くて耐えられないと思いました。中村さんは衣装がとても薄手だったので、心配でした」と思いを重ねていた。 さらに自身と役の共通点について問われると、成田は「気がちっちゃいところ。あと、できれば楽をしたいと考えているところ」、中村は悩みつつも「何をしでかすかわからない、衝動的で直感で動く部分があるところかな」とコメント。そして最後に、成田が「本当に愛情あふれる現場で楽しく過ごさせてもらい、それがこういうエネルギッシュな作品になって。予告では正直言えることが少ないまま『ラブストーリーです』という表現になってしまっているんですが……自分にとって本当に大切な作品なので、皆さんの心に残る作品になれたらうれしいです」とメッセージを伝えた。 「雨の中の慾情」は、11月29日よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国でロードショー。 (c)2024 「雨の中の慾情」製作委員会