ロイヤルティ プログラムの最新トレンドは、「エモさ」を生めるかどうか?:商品への独占アクセスを提供するブランドが増加
買い物客のロイヤルティを勝ち取るため、新商品や限定商品への会員限定アクセスを提供するブランドが増えている。 ストリートウェアアパレル小売のキス(Kith)は、3階層のロイヤルティプログラムを1月末に開始した。このプログラムには、カスタム商品や新アイテムなどへの独占アクセスのようなインセンティブが用意されている。アクセサリー小売のクレアーズ(Claire’s)は11月にロイヤルティプログラムを再始動し、新たに新アイテムやコレクション発売へのVIPアクセスを謳うようになった。D2C子供服ブランドのハンナアンダーソン(Hanna Andersson)が9月に開始した初のロイヤルティプログラムは、会員が新商品に早期アクセスや限定商品の独占アクセスを提供している。 長いあいだ、顧客のロイヤルティは割引やポイントなど交換可能な通貨で定義されてきたが、これには多くの費用がかかることがある。最近のロイヤルティプログラムは、商品への独占アクセスのように、金銭的なインセンティブだけでなくエモーショナル(感情的)な価値がある特典がトレンドになっていると、戦略マーケティングインサイトプラットフォームのスーズ(Sooth)の創設者イアン・ベアー氏は言う。また、商品への独占アクセスを許可することで小売企業は貴重なフィードバックを得て、在庫をコントロールできるという利点もある。
エモーショナルなつながりを重視
近年では、購入を促進するためにエモーショナルなつながりがより大きな役割を果たすようになってきた。「独自の恩恵があり、記憶に残るようなものを顧客に提示することで、純粋に取引だけの関係では生み出せないような、ある種の感情的な結びつきを作り上げることができる」とベアー氏は話す。「ロイヤルティの視点から見ると、顧客があるブランドに対して感情的な結びつきを感じていると、その顧客のLTV(ライフタイムバリュー、顧客生涯価値)は4倍になり、平均で20カ月も長くそのブランドの顧客で居続けることが判明している」。 実際に、人々に対して何かしらの独占的なアクセスを与えることで、より強い感情的な結びつきを構築することを重視するブランドは増えてきている。たとえばクレアーズのロイヤルティプログラムは誰でも自由に参加でき、新商品への早期アクセスや会員限定のサービスを受けられるだけでなく、独占イベントへの招待もある。これに対して、アンダーアーマー(Under Armour)が昨年開始した初のロイヤルティプログラムでは、会員が新商品や特別なイベント、アスリートやフィットネス指導者の独占動画に早期アクセスできる。 ブランドがロイヤリティ会員に提供しようとする商品の種類はさまざまだ。ほかの人気ブランドと共同で開発した限定商品を重視するブランドもあれば、限定商品と連動した割引や特売を優先するブランドもある。たとえばキスはアディダス(Adidas)と提携し、ロイヤルティプログラムの会員向けに限定版のフットウェアを開発した。クレアーズでピアスの穴をあけたロイヤルティプログラムの会員は、17ドル(約2530円)相当のイヤリングを毎月受け取ることができる。ハンナアンダーソンは、限定版パジャマをわずか5ドル(約745円)で購入できるようにした。 アパレルの模造品、すなわち外観と品質がほぼ同じでありながら、ブランド品のように高価でない品物であふれている現在、買い物客は自分がブランドに共感できなくなればすぐに乗り換えようとすると、リングコミュニケーションズ(Ring Communications)の創設者でサフォーク大学(Suffolk University)の非常勤教授キンバリー・リング・アレン氏は指摘する。 「力を持った消費者の重要な特徴は、報われ、意見を聞き届けられ、特別な存在であると感じたがっていることだ。クーポンはもう役に立たない」と同氏は言う。