岡田将生“氷室”の衝撃ラストも…上田慎一郎監督の特色が出た巧みな構成<アングリースクワッド EPISODE ZERO>
岡田将生主演ドラマ「アングリースクワッド EPISODE ZERO」の第3話が11月28日に配信され、公開中の映画「アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師」の“前日譚”となる物語が完結。今作の脚本も担当した上田慎一郎監督の構成が光った。(以下、ネタバレを含みます) 【写真】第3話には劇場版で主演する内野聖陽もチラリと登場 ■映画「アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師」の前日譚 同ドラマは、映画「アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師」の前日譚。映画の原作は、ソ・イングク、スヨン、マ・ドンソクが共演した韓国ドラマ「元カレは天才詐欺師~38師機動隊~」(2016年)で、映画&ドラマともに映画「カメラを止めるな!」(2017年)の上田監督がオリジナル要素を加えてリメイクした。 映画は、内野聖陽演じる税務署に勤める真面目な公務員・熊沢次郎が岡田将生演じる天才詐欺師・氷室マコトと手を組み、クセ者ぞろいの詐欺師集団“アングリースクワッド”を結成して、壮大な税金徴収ミッションに挑む物語。 ドラマは氷室を主人公に、熊沢と出会う3年前が舞台。のちにアングリースクワッドのメンバーになる白石未来(森川葵)と村井竜也(後藤剛範)と、俳優志望の若者たちをだます悪徳女優・渡麗華(清水美砂)に復讐(ふくしゅう)のため詐欺を仕掛ける展開だ。 ■ハラハラドキドキの最終決戦、麗華が氷室の正体を知る 麗華にインド映画への出演依頼をきっかけに、2億円の出資契約も取り付けた氷室たち。最終契約の場に1人で臨んだ未来は、帰り道、ガッツポーズをして喜んだ。 ところが、未来が出て行った後、麗華は「くっそ詐欺師が」と口汚くののしった。数日前、麗華の元を訪ねてきた金髪の若い女性が、氷室が詐欺師だと教えたのだ。彼女は、連絡が取れなくなった氷室を見かけて尾行したら麗華の事務所へ入っていくところを見たのだという。 他の出資者に挙げられていた人物も架空の話だったと分かり、怒る麗華。だが、「詐欺罪は成立要件が厳しい」ため「できるだけ重い刑を科してやりたい」と、一旦だまされたふりをして出資金を振り込んでから警察に突き出すことに。ただ、警察を呼ぶ前に、“おしおき”として痛めつけることも命じた。暴れたから正当防衛だったと警察には釈明するという、根っからのワルな麗華に苦笑してしまう。 金髪女性に教えてもらった氷室たちのアジトを取り囲む、麗華の息がかかった闇金組織の者たち。一方、中にいる氷室たちは無事に入金があったことを喜び合っていた。 ■「カメラを止めるな!」をヒットさせた上田監督の演出手腕 映画ファンの方なら、上田監督作品ということで勘鋭く展開を予想しているかもしれない。初の長編監督作品で、低予算制作から口コミで全国公開となり、海外でリメイクされるまでの大ヒットになった「カメラを止めるな!」は、前半から後半へと視点が変わる多層構造の展開で観客を引き付けた。長編第2弾の「スペシャルアクターズ」(2019年)も同じで、ラストまで幾度かの驚きが待っている。 その監督が得意とする構造の面白さと、詐欺のテーマは相性がいい。個性的なキャラクターを吸引力として、だまし、だまされ、実はバレてる?という展開がポンポンポンとテンポよく進むのだが、いやこれで終わらない、きっと何かあるはずだ、もしかして…という疑いがよぎることで、いつのまにか物語に夢中に。きっと予想を裏切る面白さに出合えるはずだ。 また、「カメラを止めるな!」はゾンビ映画の撮影が舞台、「スペシャルアクターズ」は依頼者からの相談や悩みごとを役者たちが演じることで解決する何でも屋の一面がある俳優事務所の話で、どちらも“演技”が鍵だった。今作の未来は俳優志望だった過去を持ち、麗華は悪徳になってしまったが現役の女優。人をだますことは「芝居を打つ」とも言うが、“演技”は詐欺の計画に欠かせないともいえる中で、上田監督のエンタメ愛ある特色が楽しめる。 ラストで氷室の身に起きることまで実に見事な構造で見せてくれる。ただ、この物語は氷室にとって、本命のターゲットに向かう序章でもある。ラストに氷室が投げ掛けた視線とかすかなほほ笑み。氷室の視線の先にいたのは、ほんの少し登場する映画の主人公・熊沢だ。映画、ドラマどちらが先でも楽しめるが、どちらでも見返したくなる構成もまたうまい。 「アングリースクワッド EPISODE ZERO」は、Leminoで全話独占配信中。 ◆文=ザテレビジョンドラマ部