【子連れ美術鑑賞についてのアンケート】の結果を発表! TABに寄せられた701人の声から子供とミュージアムのリアルに迫る
子供を連れた美術館訪問や展覧会鑑賞をどう考える?
Tokyo Art Beatは、2023年11月に2週間にわたり「子連れ美術鑑賞についてのアンケート」をオンラインで実施し、読者の意見や体験、エピソードを募った。 期間中に寄せられた有効回答は701人。今回のアンケートはデータの収集・分析を目的とする調査ではないが、おおよその傾向は把握できた。それぞれの質問項目ごとの概要と回答者から寄せられたコメントを抜粋して紹介しよう。 なお、コメント文末のカッコ内は回答者ネーム、匿名希望は匿名、無記名は表記なしとした。
【Q1】子連れで美術館へ行ったことがある?
(質問全文)身近に子供がいる場合、美術館に一緒に行ったことがありますか? ある場合はなぜ一緒に美術館に行こうと思ったか、ない場合はなぜ行かないか、それぞれの理由も教えてください。 自分の子供などと「美術館に一緒に行ったことがある」は、回答の半数以上を占めた。 理由としては、以下のような積極的な意見が目立った。 子供が芸術に触れるのは当然の営み(匿名) 素晴らしい美術を、子供の先入観のない感性で感じてもらいたかった(あやなの) 子どもの頃から鑑賞することの喜びを知ってほしい(野中ひとみ) 美術館はどんな人にも開かれた場所(匿名) また、「妊娠前から美術館に行くことが生活の一部で、美術館が特別なものと思っていない(匿名)」「元々美術館へ行く習慣があり、『一緒に行く』のが自然な流れ(ショミー)」など元々の習慣を継続しているという回答、月に一度、赤ちゃん優先dayがあったので(架空のことなら)」「子どもが小学校低学年を過ぎてから。それまではチョロチョロしてしまうので行けなかった(三日月)」のように条件付きで訪れている事例もあった。 一緒に連れて行く事情を伝える回答も。 シングルマザーなので、家に子どもをひとり残して行けない(青虫研究所) 2時間おきに授乳が必要で離れられなかった(匿名) 見たい展覧会、作品があり、子供の預け先がなかったため(コマイ) 子供の年齢は以下のコメントなど乳児から小学生まで幅があった。 「0歳の頃から月に1、2度ほど美術館に連れて行きます(匿名)」「0歳半の頃から頻繁に一緒に行っています(lessismore)」「小学校5年生の時が最初で、絵を描くのが好きな子だったから(大澤夏美)」 また「岸田劉生展のポスターを見て本人が行きたいと言った(匿名)」「息子がEテレの『びじゅチューン!』が好き(りーひら)」等、子供の関心をきっかけに美術館に出かけた例もあった。 子供の加齢に伴う問題を指摘する回答も寄せられた。 子どもが0歳の時、ベビーカーや抱っこ紐を使用して美術館やギャラリーに10回以上行った。子供が歩き出した頃、展示室内で走り回って作品を触ろうとしたり、大きな声を出したりしたため行けなくなった(たまお) 子供が0~1歳の頃、3回ほどベビーカーで連れて行った。国立新美術館の託児サービスをおもに利用した。(託児できない年齢になり)5歳の現在まで一緒に行っていない(鈴木一馬) 全体の4割強が子供と一緒に「行ったことはない」または無回答で、これは身近に子供自体がいないケースも含まれる。 目立ったのは、ほかの鑑賞者に対する遠慮や危惧のため行かないという回答だ。 小さな子供の泣く声や走り回る様は作品鑑賞の邪魔になる (子供が)騒ぎ出したらと思うと心理的ハードルが高い(匿名) 学芸員や他の人からの冷ややかな目や、実際に注意されるのが怖かった(ハム) (SNS等での)バッシングが怖い アンチ子連れの迫害に遭いそうで、行こうと思えません(匿名) 子連れで美術館を訪れる困難や負荷を行かない理由に挙げる回答も多かった。 美術館まで行くのが大変。展示品を満足に見れずチケット代が無駄になりそう(匿名) ずっと抱っこせざるを得ず、重い(匿名) (子供が)騒がないか、走らないか、ぶつからないか等を考えていたら鑑賞どころではない(匿名) 美術館の鑑賞環境を理由に挙げた回答も複数あった。 兎にも角にも静かでなければならないという雰囲気で子が楽しめるとは思えない(凪) べビーカーNGのところばかり(匿名) 有名な絵画展だと人が多く、子どもがのんびり過ごせない また、子供の美術鑑賞や美術館訪問自体に疑問を呈したり否定したりする意見も見られた。 子供の視力は弱いため美術を鑑賞するのに適さない 美術館は大人が楽しむための空間 情操教育を目的に連れていくのは分かるが、効果が疑問。子供が興味を持つとは期待できない(はらへりり)
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