給与を2万円アップした途端「定時退社」する社員が増えた…「固定残業制」を導入した方がいいでしょうか?
賃金アップをしたことで、今回の事例のように社員たちの中には「基本給が上がったから残業せずに早めに帰ろうかな」と考える人が出てくるかもしれません。 一般的に残業は少ないに越したことはないですが、業務内容によっては「その日のうちに業務を終わらせてほしい」という場合もあるでしょう。そのようなときに、社員が業務を終えずに定時退社すると困ってしまうケースもあるかもしれません。 では、「固定残業制」を導入すれば残業を推進できるのでしょうか? 本記事では、固定残業制の概要や定時退社との関連性について、基本ポイントを解説します。 ▼毎日「8時50分」から朝礼が! 定時は9時だけど「残業代」は請求できる?「義務」か判断するポイントとは?
固定残業制の概要
固定残業制とは、一定額を残業代として社員に固定支給する制度です。 予想される残業時間を推定し、それに対応する残業代(固定残業代)を決定します。 実際の残業時間がまったくなかったり、推定時間を下回ったりしても、決定していた残業代は原則として保証されます。 逆に実際の残業時間が想定時間を上回っていた場合は、差額分を上乗せして支払わなければなりません。厚生労働省によると、差額分が支払わない場合は労働基準法違反(賃金不払い)となります。 ■注意! 固定残業制は「強制」残業制度ではない 固定残業制は「固定」という言葉が使われているとはいえ、決まった時間残業することを社員に強要するものとはいえません。 例えば「20時間の残業時間」があらかじめ見込まれている場合であっても、社員が必ず20時間働く義務があるわけではありません。 以下のような正当な理由がある場合、社員は残業を断れるものと考えられます。 ●36協定(残業時間上限を原則月45時間・年360時間に定めた協定)に違反している場合 ●健康に悪影響が及ぶ場合 ●育児や介護などの必要に悪影響が及ぶ場合 ●業務上不要な残業を命じられた場合(社員が自分の果たすべき割当分を終えている場合)
固定残業制だと残業する社員は増えない?
固定残業制を導入したとしても、残業の強制力はないため、残業する社員の増加に直結するわけではありません。 しかし、固定残業制を導入することで、以下のような影響が出ることは考えられます。 ●会社が社員に対して、固定残業代程度の業務量を期待していることが示される ●残業代として報酬を受けていることで、社員が残業を比較的受け入れやすくなる