<インドその5~ 魔人への手紙> フォト・ジャーナル 高橋邦典
デリー東部にある、700年の歴史をもつフィロズ・シャー遺跡。この宮殿内にいくつも残る狭い洞窟の中は、人々でごった返していた。毎週木曜日、願い事を綴った手紙をもって、多くの人々がここを訪れる。訪問者たちは暗い洞窟に入り、壁に手紙を張り付けると、香や蝋燭に火を灯しながら神妙に祈りを唱える。写真を撮っていた僕は、5分と経たないうちに、洞窟内にたちこめる煙で目を開けていられなくなった。
一体誰に願をかけるのか? なぜ木曜日なのだろう? この習慣の歴史は定かではないが、カラスや火の粉、時にはヒゲの長い白装束の老人に姿を変える魔人が、人々の願いを聞き入れると信じられている。 本来はこういう考古遺跡内での宗教的行為は禁止されているのだが、止めようがないらしい。魔人を信じる人が多すぎるのだ。 「強制的に禁止したら、暴動がおきるよ」 遺跡の管理人の一人がこう言った。 (2015年10月撮影) Copyright (C) Kuni Takahashi. All Rights Reserved.