国スポでも自己ベスト更新 中3でベンチプレス120㎏ 陸上100mで急成長続ける畠山一気選手【宮城発】
持ち味は爆発的な加速力
畠山選手は2024年5月から仙台の陸上クラブ「スタートライン」に所属。本格的な指導を受けるようになると、短距離走の記録はぐんぐん伸び始めた。冒頭の県中総体決勝は、まさに成長途中の通過点に過ぎなかった。畠山選手の指導にあたるスタートラインの菅秀輝さんは「一番の持ち味は爆発的な加速力、トップスピードの高さ」だという。初めて見た印象は大学生かと思うくらいだったと振り返る。
初めての“つまづき”
だが、急成長につきものの“つまづき”も待ち構えていた。8月、全中陸上100m決勝。初出場ながら予選を全体2位で通過し、初優勝への期待も高まる中、フライングと判定され失格となった。大会は、直前に中学生記録(10秒46)を更新し注目を浴びていた、千葉県の小寺慎之助選手(習志野四中)が優勝した。「全国の決勝で走ることが目標」と話していた畠山選手は、自分が輝くはずだったレースを外から眺めることしかできなかった。
あきらめない原点
落ち込む畠山選手に父・智一さんは「思い通りにいかないことがあっても、あきらめないで前に進め」と声をかけたという。その言葉の裏にあったのは、東日本大震災の経験だ。 津波で当時1歳の畠山選手と住んでいた自宅は全壊。すんでのところで命は助かったものの、家にあったトレーニング設備は全て無くなった。智一さんはふるさとの雰囲気が沈んでいるのを見て、もう一度アームレスリングで日本一を目指すことを決意。初優勝した2004年から11年後の2015年、再び日本一に輝いた。 直接の記憶はなくとも震災のことを聞かされて育った畠山選手は、素直に父の言葉を受け止めた。決勝の翌月の記録会では10秒63と自己ベストをさらに更新した。
再び全国の舞台へ
そして臨んだ佐賀国民スポーツ大会。畠山選手は中学3年生と高校1年生を対象とした少年男子B100mに出場した。予選を10秒67で2位通過すると、準決勝では10秒61と中学歴代5位の好タイムを記録。大舞台でも自己ベストを更新し決勝進出を果たした。 決勝に進出した8人中6人は高校生。残る2人のうち1人は畠山選手、もう1人は全中で優勝した小寺選手だ。 スタートはわずかに出遅れたものの、終盤に伸びを見せ、全中チャンピオンの小寺選手をかわしてゴール。10秒91とタイムは振るわなかったが、調子が良くない中でも7位と結果を残した。 畠山選手の目標は、高校日本初の9秒台。そして、みんなに応援される選手になることだ。本格的に競技を始めて1年。越えなければならない壁はまだまだ多いが、震災後に再び日本一に輝いた父のように、ふるさとに希望をもらしてくれるに違いない。
仙台放送