同性パートナーが殺害も「遺族給付金」不支給 「彼との関係を法律で“守られるべきもの”と認めて」最高裁弁論後に原告訴え
「同性パートナーに犯罪被害給付金の支給を求める裁判」の上告審弁論が、3月5日最高裁判所で開かれた。 【写真】原告は事件以降、声を発することも難しくなった この訴訟は、20年以上連れ添ったパートナーを殺害された原告・内山靖英さん(49)が、犯罪被害給付制度の遺族給付金の支給を求めたところ、同性同士であることを理由に不支給とされたことの取り消しを求めるものだ。 同制度の根拠となっている犯罪被害者等給付金支給法(犯給法)は、婚姻届を出していない、いわゆる「事実上の婚姻関係にあった者(事実婚)」でも支給対象になると定めており、同性パートナー関係が事実婚に含まれるかどうかが争点となっている。
他の法令の解釈にも大きな影響を与える可能性
同日、原告と代理人弁護団が会見を行い、上告審弁論での主張を説明した。 原告側の主張について堀江哲史弁護士は、「同制度の目的は『被害者の権利利益の保護』にあり、同法の解釈もその目的を踏まえたものであるべきで、仮に同性パートナーを含まず不支給とするなら、憲法14条1項(※)違反にあたると主張した」と説明。 ※すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。 その上で本訴訟の社会的な意義について、「犯給法以外にも『事実上婚姻関係と同様の事情にあった(ある)者」という文言を含んだ法令は230件あり、地方自治体の条例にもこの文言を含むものがあるとして、「今回の最高裁判断は他の法令の解釈にも大きな影響を与える可能性がある」(堀江弁護士)とした。
「社会意識」は“差別解消”とは無関係
被告である愛知県側は、同性パートナーに給付金を支給するには、国民感情を踏まえる必要があり、同性パートナーの共同生活を事実婚に同視しうる社会意識の醸成がなされていないという、一審と二審の主張を繰り返した。 この被告側の主張について堀江弁護士は、「まず、多数派が差別を許しているからといってそれを容認するのでは裁判所は役割を果たしていないことになる。また、パートナーシップ制度を導入する自治体や同性カップルを対象にした福利厚生を実施する民間企業も増えており、同性事実婚に対する理解は社会の中で進んでいて、社会意識も醸成されていると考えられる」と述べ、愛知県の主張について「二重に間違っている」とした。