損失270億円計上…住友化学がサウジ合弁株売却、「今回の内容はベストに近い」理由
住友化学は7日、サウジアラビア国営石油会社サウジアラムコとの合弁会社、ペトロ・ラービグの株式の一部を売却すると発表した。2026年3月期に持ち分のうち約22・5%をアラムコに売却し、住友化学の出資比率は15%に下がる見込み。売却収入分はラービグに拠出し、債権放棄も実施する。住友化学とアラムコ双方の立場を考慮した形だ。住友化学は業績改善を図りつつ、強みである農薬や半導体材料などの成長戦略を加速させる。 【一覧表】総合化学5社の決算詳細 「今回の内容はベストに近い」。住友化学の岩田圭一社長は7日の会見でこう力を込めた。住友化学の立場、アラムコにとってのラービグの役割などを踏まえつつ出された結論だったようだ。 株式売却後は、ラービグへの出資比率が住友化学15%、アラムコ60%、一般株主25%に変わる。住友化学は株式売却で得る7億200万ドル(約1000億円)を、アラムコも同額をラービグに拠出する。住友化学とアラムコはそれぞれ7億5000万ドル、合計15億ドルの債権放棄も実施。一連の施策でラービグの財務改善を図る。住友化学は24年7―9月期連結決算で、債権放棄と持ち分法による投資利益の差し引きで税引き前損益として約270億円の損失を計上する見込みだ。 住友化学とアラムコはラービグ再建に関する共同タスクフォース(特別作業班)を結成し、短期集中で対策を議論してきた。岩田社長は「日本・サウジの友好関係、経済協力関係を象徴するプロジェクトで失敗できない。双方が納得できる案を話し合ってきた」と強調する。併せてアラムコへの出資比率を15%より減らすことはないとの考えを示した。今後はアラムコ主導でラービグとの相乗効果を高める構え。収益力強化による再建に取り組む。 ラービグは09年にエタンクラッカーの操業を開始。住友化学はいわばグローバルな石油化学会社への発展を果たした。コスト競争力のあるエタンを原料にキャッシュカウ(安定収益源)としての役割も期待された。一方で度々停電や設備トラブルに見舞われ、「本来稼ぐべき最初の10年間に稼げなかった」(岩田社長)。石油精製の高度化といった対策が後手に回り、石化市況の低迷もあって赤字が拡大したとの見方だ。 実際、住友化学の石化を担うエッセンシャルケミカルズ部門の24年4―6月期のコア営業損益は、207億円の赤字(前年同期は210億円の赤字)だった。同社はラービグへの出資比率が下がることで業績への影響が緩和されることを期待している。 住友化学は今後、より技術力を生かした事業の推進による成長戦略に注力する方針だ。例えば、当面の成長ドライバーとして農薬などの農業関連、半導体材料をはじめとする情報通信技術(ICT)分野を挙げ、経営資源を集中させる。岩田社長は「ここ(成長戦略)にラービグは入っていない。成長戦略が加速できる体制になった」と語る。今後はそうした体制の実効性が試される。