日銀追加利上げのペースは鈍化か(日銀金融政策決定会合):米国の動向次第で追加利上げは後ずれ:首相交代の影響も
日本銀行の追加利上げペースを鈍化させる4つの要因
筆者は、日本銀行の追加利上げの時期について、来年1月を標準シナリオとしている。今年3月のマイナス金利政策解除から7月の追加利上げまでよりも間隔が開くが、追加利上げのペースは鈍化すると見込んでいる。その理由は主に4点だ。 第1に、為替市場が円高に転じたことだ。7月の追加利上げまで、日本銀行の政策金利引き上げは予想外の円安によって後押しされてきたと考える。円安が物価の上振れリスクを高めること、物価上昇を通じて個人消費に逆風となること、政府サイドから個人消費の逆風になる円安を抑えることを暗に求められること、などが背景にあるだろう。しかし、7月以降は円安の修正が進んでいることから、日本銀行が追加利上げを急ぐ必要性が低下している。 第2に、円安修正の結果、今後物価上昇率はやや下振れていくと見込まれることだ。コアCPI(消費者物価上昇率・除く生鮮食品)は前年同月比で2%を超えているが、コアコアCPI(食料(除く酒類)・エネルギーを除く基調的な消費者物価)の上昇率は1%台まで低下している。コアCPIや基調的な消費者物価上昇率の上振れは、輸入物価上昇による一時的な側面が強いが、輸入物価の上昇も海外での食料・エネルギー価格の上昇ではなく、足もとでは円安の影響によるものだ。足もとの円高が続けば、輸入物価は低下に転じ、コアCPIの上昇率やコアコアCPIの上昇率は下振れていくだろう。その結果、2%の物価目標達成も遠のいていくと予想される(コラム「全国8月コアCPIは4か月連続で上昇も事前予想通り:今後の金融政策を占う観点からも注目される円安修正の物価への影響」、2024年9月20日)。 2%の物価目標の達成を前提としなくても、現在の政策金利は十分に低いことから、利上げ方向は変わらないだろうが、このような物価情勢の下では、日本銀行は追加利上げを急がないだろう。
FRBの利下げも日本銀行の追加利上げを一定程度制約するか
第3が金融市場の動揺だ。8月の歴史的な株価下落後も、植田総裁は、追加利上げの方針は変えていない。しかし、それ以前と比べると、不安定な金融市場の動向により注意を払いつつ、慎重に追加利上げを進めることが求められるだろう。 そもそも、歴史的な株価下落の背景には、物価高騰の下でも日本銀行が異例の金融緩和を維持し続けたことがあり、それによる行き過ぎた円安・株高の調整が生じたものと考えられる。引き続き調整の余地は残されているとみられ、日本銀行は追加利上げをより慎重に進めることが求められる。 第4は、FRBが9月18日に利下げを実施したことだ。この結果、日本と米国とが逆方向に政策金利を動かすという、異例の状況となった。これは未知の領域でもあり、金融市場や国際資金フローに与える影響は予想がつかない面がある。 急速な円高ドル安など、金融市場が大きく変動すれば、日本銀行は追加利上げに慎重にならざるを得なくなる。