土佐兄弟卓也×漫画家みそくろが語る学生時代の黒歴史
◇一人称を迷って「おいら」に…(笑) ――思い出すと恥ずかしい、思春期ならではの言動など教えてもらえますか? みそくろ:作品の冒頭に「僕からオレに変える」っていう描写を描いてるんですけど、 私も中学生のときに一人称を迷って、「おいら」と言ってたことがあって…(笑)。 卓也:それは恥ずかしいですね(笑)。でも、なんで「おいら」だったんですか? みそくろ:女の子の一人称って「私」「うち」「自分の名前」の3タイプが定番だと思うんですけど、私のまわりは「うち」はちょっとギャル系の子、「自分の名前」はかわいい系の子、そうじゃない子は「わたし」みたいな感じだったんです。だから私も、もともとは「私」だったんですけど……。 『週刊少年ジャンプ』とか『週刊少年マガジン』を読んでいたり、スカートよりズボンほうが好きだったり、ショートカットだったりとか、女の子っぽい感じじゃないかもと思い始めて……。だけど、男の子ではないから、「僕」や「オレ」は違うなと思った結果、「おいら」になりました(笑)。 卓也:そのくらいの年頃って、自分らしさみたいなものに悩むことってありますよね……。そこからずっと「おいら」だったんですか? みそくろ:最初は親しい友達にだけ使ってたんですけど……。ある日、教室の前に出てしゃべってるときに、「おいらは~」ってこぼれ出ちゃったことがあって(笑)。クラスのみんなに笑われたことはもちろん、担任にも苦笑されたのが一番傷つきましたね。それ以来、使わなくなりました。 卓也:それはかなりキツイっすね(笑)。僕は親の呼び方で悩みました。小学校低学年くらいのときは、「パパ・ママ」って呼んでたんですけど、ある日、急にそれが恥ずかしくなって「親父・おかん」ってなりました。「お袋」って呼ぼうかなとも思ったんですけど、さすがにそれははやりすぎか……とか(笑)。そういうので悩むのも、学生ならではですよね。 みそくろ:別に嫌いになるとかじゃなく、親との関わり方は悩みますよね。 卓也:僕の場合は、思春期真っ盛りのときは家族行事に参加するのも恥ずかったです。うちは年に一度、絶対に家族写真を撮るんですけど、中学1~2年のときだけ、僕いないんですよ(笑)。この日に撮るよって言われてたんですけど、「家族で写真撮るのとかダルいわ」とか言って、学校帰りにわざと寄り道して。そんな僕を見て、こういうふうにはならないようにしなくちゃと思ったらしく、弟は毎年参加してました(笑)。 ――そういう思春期の反抗って、今思えば、なんの意味もなかったなって思いますよね(笑)。 卓也:なります、なんならやめとけよ!って思いますね(笑)。僕、アメリカへの家族旅行も参加しなかったんですよ! それはマジでもったいないことしたと、いまだに思います。 みそくろ:えぇ! それは本当にもったいないですね(笑)。 卓也:本当に……(笑)。思春期の反抗的な感情からの行動って、「やめとけよ」ってことのほうが多いですよね。反発してることを表したいから、髪の毛を脱色して学校に行ったりとかもしてましたし……。そういうのを思い出すだけで恥ずかしくなってきます(笑)。 みそくろ:でも、大人目線だとそういう心の成長って、見ていておもしろいですよね。それこそ髪を染めてる子とかって、ちょっとツンとしていて“この子、クラスになじめるのかな”って心配になるんですけど、いつの間にか打ち解けていたりして。そういう状況は外から見ていてほっこりします。そういうのが青春なんでしょうね。 卓也:そうですよね。今の学校にも僕らが学生だった頃と同じように、ちょっと悪い感じの子っているんですか? みそくろ:どうだろう……。でも、昔の「ヤンキー」っていう言葉に当てはまる子は、あまりいなかった気がしますね。目立ち方が違うかたちになってるんだと思います。金髪にしたり、ピアス開けたりみたいな目立ち方じゃなくて、YouTubeやTikTokでハジけるみたいな。 卓也:なるほど……。今は自分を発信できる場がいろんなとこにありますもんね。 ――土佐兄弟さんのYouTubeでは、そういう現代の学生の子のあるあるとかもやるんですか? 卓也:まったくやらないです(笑)。たまにコメントで「休み時間にTikTok撮ってる生徒あるあるお願いします」とか、「Bluetoothのイヤホンであるある見たいです」みたいなリクエストもくるんですけど、弟は実際に見たものしか演じられないので、できないですね。 みそくろ:でも、そういうコメントがくるってことは、今の子たちも土佐兄弟さんの動画を見て共感しているんですよね。 卓也:いやー。TikTokっていう若者が見てそうなプラットホームでバズったから「若者に人気」って言われるんですけど、実際の視聴者層を見ると、僕らと同世代の人がほとんどで、 「懐かしい、こういうヤツいたわ~」って感じだと思うんですよ。学生の子も見てくれてるんですけど、ニュアンスでしか伝わっていない気がします。 ――では、最後に二人から『思春期姉弟』で描かれる陽介やみかげのように、今、悩みを抱えている中高生にメッセージをお願いします みそくろ:『思春期姉弟』でも、大人から見たらどうってことのないことに悩む様子を描いているんですけど、そういうことに葛藤するのって、みんなが経験することだから、「全然大丈夫だよ」とは言いたいですね。 卓也:そうですよね。自分が変なのかなって思っている子がこれを読んだら、みんなもこういうことで悩んでるんだって気づけると思います。みんなも同じように悩んでるっていう事実を知るだけでも、ちょっと落ち着きますし。 (聞き手:梅山 織愛)
NewsCrunch編集部