<軌跡・センバツ京都国際>/上 好調一転、苦難の船出 逃した府1位、厳しい現実 /京都
「勝ち負けの責任は自分が負う」。京都国際の新チームは、新主将の決意とともにスタートした。 【写真で見る歓喜の瞬間】歴代のセンバツ覇者たち 左腕・中崎琉生は2年生ながら、2023年夏の京都大会準々決勝で敗退して2季連続で甲子園を逃した前チームでも、主力投手の一人だった。同年10月の育成ドラフトで指名されてプロ野球へ進んだ杉原望来、長水啓真ら3年生投手が抜けると、中崎に匹敵する力量の投手はいなくなった。主力野手も、守備力を期待されて下級生から起用されてきた選手が多く、高い攻撃力は期待できそうもなかった。 「今年のチームは厳しい」という声も聞こえる中、覚悟を決めた中崎は自ら主将に立候補。「自分にプレッシャーをかけないと力を発揮できないタイプだから」と話すが、投打に加えてまとめ役としても選手たちを引っ張るのは大きな負担だ。それでも、勝敗の責任をすべて引き受けるという覚悟を示し、ナインを鼓舞してチーム力を高めようとした。 秋季府大会は思惑通り順調に勝ち進んだ。海洋との1回戦、莵道との2回戦は1年生投手2人が1点も許さず、いずれもコールド勝ち。近年「府内公立最強」とも評価される乙訓との3回戦は、打線が序盤から好調で一、二回で計8点を奪うなど16安打の猛攻を見せ、10―0で六回コールド勝ちを収めた。満を持して先発マウンドに立ち、府大会を終えるまで1人で投げ続けることになる中崎は、8奪三振で悠々と完封した。 勢いを得たチームは4回戦でも京都両洋を8―0(七回コールド)で退け、福知山成美との準々決勝は先制を許したものの、六回に追いつくと終盤は打線がたたみかけて、終わってみれば9―1の大勝。準決勝は、夏の甲子園に出場した立命館宇治を7―0(七回コールド)で一蹴し、簡単に近畿地区大会出場を決めた。 1年生からレギュラーで出場している遊撃の藤本陽毅(2年)が急病で準々決勝から欠場するアクシデントがあったが、代役の清水詩太(1年)や高岸栄太郎(2年)、沢田遥斗(2年)ら中軸打者が奮起してチームがまとまった。小牧憲継監督の指導で選手個々の力を伸ばしてきたチームは、ここまでの対戦相手には優位を保っていた。 だが、京都外大西との決勝で課題が見えた。ともに2日連投となった中崎と京都外大西・田中遥音(2年)の両エースが投げ合い、二回に足で揺さぶられて失った2点を追いかける展開に。六回に沢田の二塁打などで1点を返し、相手を上回る7安打を放ったが、追いつけなかった。 九回2死二塁から良い当たりの三直で最後の打者となった清水が涙を見せたほど「京都1位」にこだわっていた京都国際ナイン。相手投手のレベルが上がれば簡単には点が取れないという現実を突きつけられ、中崎は「勝負の厳しさを思い知らされた」。チームはここから、苦難の航海に出発する。【矢倉健次】 〔京都版〕