ゆうめい『養生』【中井美穂 めくるめく演劇チラシの世界】
チラシとは観客が最初に目にする、その舞台への招待状のようなもの。小劇場から宝塚、2.5次元まで、幅広く演劇を見続けてきたフリーアナウンサーの中井美穂さんが気になるチラシを選び、それを生み出したアーティストやクリエイターへのインタビューを通じて、チラシと演劇との関係性を探ります。(ぴあアプリ「中井美穂 めくるめく演劇チラシの世界」より転載) 【全ての写真】中井美穂、ゆうめいの池田亮さん、りょこさん、田中祐希さん
正方形の紙の約半分を占める『養生』の文字。荒れ果てた景色の中を歩く人の後ろ姿。毎回目を引くゆうめいのチラシの中でも、『養生』のビジュアルには重いインパクトがあります。ゆうめいの立ち上げからデザインを担当している映像作家・アートディレクターのりょこさん、脚本・演出・美術の池田亮さん、主宰・俳優の田中祐希さんに話を聞きました。 中井 りょこさんは第一回公演からゆうめいのデザインを? りょこ はい。池田くんとは多摩美術大学の演劇サークルで一緒で、その後池田くんが田中くんと出会ってゆうめいを立ち上げたときからデザインを担当しています。 中井 ゆうめいといえばこの正方形のチラシですよね。 りょこ これも最初からです。私自身、大学で上京して初めて演劇のチラシ文化に触れて、分厚いチラシ束にびっくりして。最初の狙いとしては、チラシ束を見ているうちに、このチラシがぱらりと落ちたらいいな、と。 中井 面白いですね! 池田 しかも最初は、裏に印刷した文字も透けるくらい紙が薄くて。そのうえ正方形だから、かなり見たことのないものになっていたんです。2015年の第一回公演のチラシのことをまだ覚えてくれている人もいるくらいで。 中井 それは嬉しいですね。 池田 ビジュアル自体も、今回は写真ですけど、毎回りょこさんの手で作っている感じが強いチラシなんです。チラシがひとつの作品として成り立っているように見えて、それがいいなと思っています。 中井 チラシはチラシとして、ひとつの作品。 池田 はい。そんな気持ちもあって、前回公演『ハートランド』のとき、チラシデザインの小さなアクリルキーホルダーを作ったんですよ。 りょこ 『ハートランド』のチラシを劇場で見せればもらえるという。 中井 わ、いいですね! 池田 最近俳優さんのアクリルスタンドがあったりしますが、ゆうめいでは作りもののほうにフィーチャーしたいなと思って。りょこさんの作りものが毎回手づくりなので。 りょこ 池田くんは美術も自分でやっていることもあって、クリエーションの中でものへのこだわりや空間に与える影響が強いのかなと思って、私も実際に立体物を作ってチラシにしたり、作中の映像を作ったりしています。外注する劇団も多いと思いますけど、ゆうめいは自分たちの舞台のアート面をぜんぶ自分たちで手づくりしているので。