警察幹部が「本物のワル」「治安上の脅威」と名指しする“闇バイト強盗”の黒幕「トクリュウ」とは…
「トクリュウ」の素性
ここで言うトクリュウとは、「匿名・流動型犯罪グループ」の略称で、警察庁が近年、「治安上の脅威」と位置付けている。グループの特徴としては、暴力団などの特定の犯罪組織に属しているという訳ではなく、匿名性の高いSNSでつながり、事件ごとに流動的に活動して犯罪行為に及ぶ。 典型的なパターンとして、まずSNSで「ホワイト案件」「高額報酬」などとアルバイトを募集する投稿を行う。合法的で安全な仕事な割に高収入が得られると偽装し、応募してきた者にスマートフォンに匿名性の高い通信アプリ「シグナル」をインストールするよう指示。さらに、応募者に対して運転免許証などの写真の送信、実家の住所や家族構成などの個人情報も送るように指示する。 その後、応募者たちは仕事に向かうことを指示され、集合場所では初対面の数人の男と落ち合う。安全で高収入の仕事のはずが、個人情報を人質にとるかのように唐突に強盗を指示される。ためらっていると「なめるなよ。殺すぞ!」「家族がどうなってもいいのか」と脅迫され、従わざるを得ずに指定された住宅に押し入ってしまうという。
「闇バイト」でサケの密漁も
捜査本部設置の際に、警視庁の親家(しんか)和仁刑事部長は、「事件の背後にいる『悪いヤツら』を早期に切り取り、犯罪グループの実態を解明する必要がある」と訓示した。 首都圏で発生した一連の事件ではすでに30人以上が逮捕されているが、いずれもSNSで闇バイトに応募していた。実行役は報酬を得られないばかりか使い捨てられるのも共通している。首都圏のほかでも、北海道斜里町でサケを密漁していたとして、無職の男ら4人が逮捕された事件もあった。 男らも同様にSNSで闇バイトに応募し千葉県、神奈川県から集まっていた。このように関連が疑われる事件はほかにもあり、合計すると20件以上とみられる。 警察庁の露木康浩長官は10月24日の会見で、「被害者がお亡くなりになるなど、国民の体感治安に深刻な影響を与えている。重要なのは一刻も早く首謀者を逮捕することだ」との方針を示した。