震災復興政策と文書改ざんに見える霞が関の「機能不全」
国民は権力に何を委ねるか
政治側の「強引さ」の背景には何があるのか。山下氏は、そこには制度的な側面もあると推測する。 マニフェスト型の政治が進んだことで、「有権者に政策の進ちょくを『見せる』回路ができた。そのことでかえって、うまく進んでいないと言いにくい構造が生まれている」。そしてそれは「二大政党制をつくっていくというプロセスがこういう構造をつくってきたのでは」ともいう。 日本では1990年代以降、イギリスの議院内閣制を参考に、二大勢力による政権交代や官邸機能強化による政治主導へ向けた統治機構改革を進めてきた。例えば小選挙区制の導入や近年の内閣人事局の設置などだ。これについて山下氏は「設計図通りではあるが、結果はとんでもないものが出来た」と現状を分析する。 私たち国民の側のマインド変化の影響も指摘する。「いま国民は国家や市場への依存が強い。依存が過ぎると権力が一極に集中する。そして、一極に集中しすぎると、社会のシステムはいびつになり、かえって権力は適切な判断が下せなくなる。システムが暴走する可能性さえ生じている」。 権力に何を委ねるか――。国民は「権力の動かし方」をあらためて見つめ直すべきだと山下氏は問いかける。
《取材協力》山下祐介(やました・ゆうすけ) 首都大学東京准教授。専門は社会学(都市社会学・地域社会学・農村社会学・環境社会学)。弘前大学准教授などを経て現職。過疎高齢化、災害、環境問題などに取り組む。著書に「限界集落の真実」「地方消滅の罠」(ちくま新書)「『復興』が奪う地域の未来」(岩波書店)などがある。「津軽学」の活動にも参加
【記事中で触れた主な政策文書】 ・東日本大震災からの復興の基本方針(2011年7月29日) ・風評対策強化指針(2014年6月23日) ・原子力災害からの福島復興の加速に向けて(改訂)(2015年6月12日) ・平成28年度以降の復旧・復興事業について(2015年6月27日) ・原子力災害からの福島復興の加速のための基本指針について(2016年12月20日) ・風評払拭・リスクコミュニケーション強化戦略(2017年12月12日)