震災復興政策と文書改ざんに見える霞が関の「機能不全」
「自画自賛」の復興進ちょく
震災復興の順調さに関する「自画自賛的な記述」は政策文書の随所に見られるという。 例えば、2016年3月11日に閣議決定された「『復興・創生期間』における東日本大震災からの復興の基本方針」には、「10年間の復興期間の『総仕上げ』に向け、復興は新たなステージを迎えつつある」「また、田村市、川内村、楢葉町で避難指示の解除等が実施されるなど、復興は着実に進展しつつある」などと記されている。 山下氏は、これは官僚側の政権へのおもねりではないかと感じている。それが顕著になったのは、第3次安倍内閣(2014年12月発足)前後からではないかと振り返る。 2015年11月の復興推進委員会で配布された資料「復興の加速化に向けて」には、「総理御発言」として安倍首相の「さらに復興を加速化させなければならない」との言葉が紹介されている。ある時期からこうした「総理の御発言」「大臣のご指示」といった言葉が見られるようになってきた印象だという。
財務省や厚労省の問題との共通項
今年2月には「働き方改革」の一貫として安倍政権が適用拡大を目指した裁量労働制に関するデータに「誤り」があったことが発覚した。裁量労働制の方が一般の労働者より労働時間が短いと結論づけたデータだったが、不適切なデータ比較によるものだったのだ。加藤勝信厚生労働相は「実態を反映したものではない」として、データの撤回に追い込まれた。 そして3月に入り、今度は財務省の決裁文書改ざん問題が報じられ、12日に麻生財務相は「書き換え」を認めた。昨年2月下旬から4月にかけて、理財局で佐川宣寿前局長の国会答弁に合わせる形で書き換えが行われたという。 山下氏は「ちょうど同じような時期に霞が関の各方面で異常な事が起きるようになってきた。行政が機能不全を起こしている」と警鐘を鳴らす。 「改ざん問題では、理財局がなぜこんなことに手を染めたのか、そのメリットはどこにあったのかという取り上げられ方がされている。しかし問題は逆なのではないか。できない政策を政治の側から押しつけられ、それを全うするために無理を重ねた結果が、文書書き換えだったのだろう」 このことは、震災や原発事故からの復興政策で「論理的にも矛盾し、現実に合わないことを強引に推し進めようとした点」と印象が重なるという。 「ある時から政治と行政のバランスが崩れ、『行政が歪められる』事態が生じ始めている。こういう現実認識を持てば、永田町と霞が関全体で何が起きているのか想像がつく。このことは文部科学省の『加計学園』問題でも現れた。他の政策現場でも、表に出ていないだけでそういった問題が起きているのではないか」