安藤和津「3か月の登校拒否」中学のいじめで決意したキャラ変、「和津ちゃんちは臭い」と言われた家庭環境
そこへ、脊椎カリエスで背骨が歪んでしまった叔母が、「お菓子をどうぞ」と運んでくるのですから、たいていの子どもはびっくりしちゃいますよね。そんなことが何度かあって、だんだんと友達が家に遊びに来なくなる。そういうことの繰り返しが、つらかったですね。 ── “ミチコバタン”と呼んで慕っていた叔母さまのことはエッセイでも書かれていましたね。脊椎カリエスの後遺症はあっても、おしゃれで美しい女性だった、と。
安藤さん:本当にそうなんです。うちの家系って、私以外はみんな彫りの深い欧米系の顔立ちなんです。叔母も目鼻立ちのくっきりした美人で、ファッションのセンスもあって。 母方の叔父もアラン・ドロンに似た、映画会社の人にスカウトされるくらいの美青年でした。彼は年の離れた私のことをすごくかわいがってくれて、デートに行くときも私を連れて行っては彼女に紹介してくれたぐらいなんですよ。 その叔父が、本当は私の実の兄だったと明かされたのは、彼が若くして白血病で亡くなってしまった後でした。叔父であり、兄であった彼の最期のことは忘れられません。スポーツ万能ではつらつとしていた彼の頬が痩せこけ、大きな目だけがギョロギョロと動いて、痛みのあまり物を投げたり暴れたりしてくる。
ちょうどクリスマスの頃が末期だったのでジングルベルの曲を聴くたびに兄彼の最期の姿や、それを見て泣いていた母のことを思い出すので、年の瀬は大嫌いでした。その痛みがようやくやわらぐようになったのは、子どもが生まれてクリスマスを楽しめるようになってからでした。 PROFILE 安藤和津さん 1948年、東京都出身。学習院初等科から高等科、上智大学を経て、イギリスへ2年間留学。CNNのメインキャスターを務める。1979年、俳優・映画監督の奥田瑛二さんと結婚。長女は映画監督の安藤桃子、次女は俳優の安藤サクラ。エッセイスト、コメンテーターなど幅広い分野で活躍中。
取材・文/阿部花恵 写真提供/安藤和津
阿部花恵