全戸訪問と個別支援で〝被災者見過ごし〟なくしたい 一人一人に寄り添う「伴走型支援」 能登地震半年
能登半島地震の発生から半年。被災地では今、行政とNPO法人などが連携し、被災した自宅で避難生活を続ける人を1軒ずつ訪ねて困りごとを聞き、実情に応じた個別支援を進めようとしている。その一端を担うのが、全国から現地に集まったフードバンクの食料支援だ。 【イラストでみる】災害ケースマネジメントのイメージ 「何かお困りのことはありませんか」 石川県輪島市などで、こう声をかけながら住宅を訪ねて回るのは、社会福祉協議会の職員ら。手には訪問先で手渡すレトルト食品や缶詰、飲料などを携えている。 その食品は「フードバンク能登」(石川県穴水町)が提供する。全国約50のフードバンクから送られた食品の配布拠点として今年3月に開設後、奥能登4市町(珠洲市、輪島市、能登町、穴水町)で、被災者がとどまる住宅3千世帯以上に配られた。 ■食料持って戸別訪問 「顔見知りでもない人が被災者宅を訪ねるには理由がいる」とは、この食料持参型の戸別訪問を提案したフードバンク岩手の阿部知幸事務局長(49)。フードバンク能登には立ち上げから参加している。 東日本大震災の被災者宅を何千戸と訪ねた経験から、「ただ『何か困っていることはありませんか』と聞き回っても、『私たちは家があるから、まだまし』などと遠慮して、なかなか本音で話してくれない」と語る。 しかし、手ぶらではなく食料を持参し、手渡しながら世間話を切り出すと、次第に心を開いて「職場が被災して仕事を失い、収入が途絶えた」「高齢なので、仮設住宅には入りたくない」などと事情を打ち明けてくれるのだという。奥能登での戸別訪問を裏側で支える阿部さんは、「被災者の困りごとを丁寧に聞き取り、きめ細やかな支援につなげたい」と話す。 ■災害ケースマネジメント」とも まだライフラインが完全復旧していない被災地で、仮設住宅の入居要件を満たさなかったり、「高齢だから」と離れた場所への避難を拒んだりして自宅にとどまる被災者の中には、困窮状態を行政側が把握できず、支援の網から漏れてしまっている人がいるとみられる。 こうした〝見過ごされた被災者〟をそのままにしないため、石川県が中心となりNPO法人などと連携し、全戸訪問による実態把握を進めている。これを端緒に、先に見据えるのが、一人一人の困りごとに寄り添う「伴走型支援」の推進だ。