1ドル155円台まで円安が進行:日銀の金融政策決定会合後に為替介入はあるか
日本銀行は円安と株価下落の板挟みに
25・26日の決定会合で日本銀行が追加利上げに動く可能性は低いが、その中で為替市場に影響を与えるのは、展望レポートでの物価見通しと植田総裁の記者会見での発言の2つだ。2024年度の物価見通しは大幅に上方修正される可能性が高い(コラム「日銀・展望レポートで2024年度物価見通しは大幅上方修正か」、2024年4月24日)。それは、日本銀行の追加利上げ観測を強め、円安に歯止めをかける方向に働くだろう。 他方、植田総裁は先週、ワシントンで、追加利上げを示唆する「タカ派」色の強い発言を繰り返した。これは円安阻止を狙った「口先介入」と言えるだろう。ところが、それも影響し、いわば「薬が効きすぎた」形で、先週末には日本の株価が大幅に下落した。今週の株価は回復基調を辿ったが、25日の日本の株価は再び大きく下落し、かなり不安定な状況が続いている。 経済に悪影響を与える円安阻止を狙って、追加利上げを示唆する「タカ派」な発言をすると、今度は早期の利上げを懸念して株価が大きく下落し、経済、金融に悪影響を及ぼしかねなくなった。日本銀行は円安と株価下落の板挟み状態にあり、決定会合後の記者会見に植田総裁がどのようなトーンで今後の政策を語ればよいのかは、より難しくなってきた(コラム「日銀による為替市場への口先介入:円安進行と株価下落の板挟みに」、2024年4月23日)。
円押し上げ介入の可能性も
記者会見での植田総裁の発言で、思ったよりもタカ派色が強くない場合には、その後に円安が進むことが考えられる。他方、高い物価見通しとタカ派色が強い総裁の発言によって、円高方向に為替が揺り戻される可能性もある。為替はどちらの方向にも振れる可能性があるだろう。 円安に大きく振れれば、政府が為替介入を実施する可能性が高まる。他方、円高に振れても、政府が為替介入に踏み切る可能性があるだろう。市場で円安の流れが強い際に、為替介入でそれに立ち向かうよりも、円高に一時的に振れる局面を捉えて「円の押し上げ介入」に踏み切る方が、円高方向に市場を大きく動かすことができるケースも少なくない。 いずれにせよ、日本銀行の決定会合と総裁の記者会見が行われる26日は、為替市場では当面の山場となるはずだ。 木内登英(野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト) --- この記事は、NRIウェブサイトの【木内登英のGlobal Economy & Policy Insight】(https://www.nri.com/jp/knowledge/blog)に掲載されたものです。
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